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今年、和歌山県みなべ町には雹が5回も降り、2年連続で梅農家は打撃を受けています。そんな現状を発信し、傷ついた梅を無駄にしないよう、精力的に活動をしているのが「梅ボーイズ」のリーダー・山本将志郎さん(32)。
山本さんは、みなべ町で120年続く梅農家の出身。家業は兄が継ぎ、自身は大学院で新薬の研究に没頭していました。しかし、兄のある一言がきっかけで、2019年に梅干し屋を開業。塩と紫蘇だけで作る無添加梅干しの製造をはじめ、「梅ボーイズ」と称し、リーダーとして新規就農者の支援などを行っています。これまで7名の新規就農者が誕生しました。
なぜ梅干し屋になったのか、そして借金というリスクを背負いながらも就農支援を続ける理由について、話を伺いました。
梅の実の8割がキズものに。梅ボーイズの新たな取り組み

――今年の雹被害について教えてください。
僕たちの農園のある和歌山県みなべ町では、今年4月に5回も雹が降り、実に当たって8割の梅に傷がついてしまいました。去年は歴史上2番目に酷い雹被害だったといわれていますが、今年も相当酷いのではないかと……。
みなべ町は被害がもっとも酷くて、うちの農園の相場でいうと、8割がたは1/4くらいの価格になってしまうような傷で、1割は半額くらいになる傷、無事なのは1割になってしまいました。
――傷ついた梅はどうしているんですか?
傷がついていても、梅酒や梅シロップを作ることができるのと、梅干しも、傷によっては問題なく作れるのですが、価格を下げて販売していますね。
また、この2年の間に就農した方は、2年連続で梅の価格が半減する災難に見舞われ、大変だと思うので、傷ものの梅を市場価格の2倍で僕たちの会社で買い取り、梅肉チューブにしてクラウドファンディングで販売しています。
あとは、料理家の榎本美沙さんにご協力いただき、傷ものの梅を使ったシロップの作り方を習う講座もリターン品として用意しています。
――山本さんや梅ボーイズのSNSでも精力的に発信されていますね。
僕たちはSNSで発信してクラファンを伸ばすことができるので、傷がある梅もなんとか原材料として使うことができたと思います。
ただ、これは短期的な利益を得るだけではあるので、長期的な目線で、今後、みなべ町が梅の産地としてどう生き残っていくのか、というところは考えていかないと、と思っています。
2025.07.11(金)
文=吉川愛歩
写真提供=うめひかり