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農業に新規参入するのは難関……梅ボーイズの仕組みが就農への窓口に

――山本さんが立ち上げた「梅ボーイズ」について教えてください。もともとは薬学部でがんの新薬を研究なさっていたのが、実家の梅農家に戻られることになったんですよね。

 そうですね。実家に戻るイメージはなかったんですが、継いだ兄から「梅を栽培して送り出した後、どの梅も甘い調味液で均一な味になる」と聞いた時に、このままではいけないと感じたんですよね。それで、昔ながらの酸っぱい梅干しを後世へ残す決意を固めました。

 梅をどう育てるかはわかるけれど、梅干しの作り方はわかっていなかったので、まずは梅、塩、紫蘇だけでも美味しい梅干しを作る研究をはじめました。

 評判の良い梅干しを手あたり次第食べてデータを取り、素材の比率や種類、熟成期間を変えて比較、やっと納得のいく、添加物不使用、塩と赤紫蘇だけで漬けた昔ながらの梅干しを作ることができました。このほうが梅の栄養をしっかり残せるのも、梅農家として嬉しいところです。

 そんな経験を経て、納得の行く梅干しを軽トラに積んで、日本一周しながら売ったんです。そこで「おいしい」「懐かしい味がする」という声をもらえたことが自信になり、2019年、26歳の時に株式会社うめひかりを立ち上げました。

2025.07.11(金)
文=吉川愛歩
写真提供=うめひかり