この記事の連載

 卵かけご飯(TKG)が好きすぎて――SNSを通じて卵と鶏の魅力を発信したり、各地の養鶏場で働いたり、限定店舗やキッチンカーでTKGを提供し、現在は佐賀県で養鶏家としてのスタートを切った田中麻衣さん。その卵愛とともに、とっておきのTKGレシピを教えてもらいました。


卵かけご飯のバリエーションは無限大

――TKGにハマったのはいつごろからなのでしょうか。

 物心ついたころから、毎朝、飽きることなく卵かけご飯を食べてきました。ただ、卵の種類にまで興味が行くようになったのは大人になってからです。社会人1年目くらいのとき、私が卵好きだと知っている上司が、卵の食べ比べができる催事を教えてくれたんです。そこで初めて、卵にはものすごくたくさんの種類があることを知りました。

 卵の殻や黄身・白身の色、大きさ、味も、なんでこんなに違うんだろう? と興味がわき、調べれば調べるほど面白くなってきて。その卵の催事でアルバイトを募集していたので少しずつ手伝うようになり、養鶏場を紹介してもらって見学に行くようになりました。いろいろな卵かけご飯を作ってインスタにアップするようになったのもそのころです。

 最初はスマホのカメラで適当に撮って上げていたのですが、面白がってくれる人が増えてきたので、ちゃんとカメラで撮って、背景も工夫するようになって。反響をモチベーションに、見映えも考えながら更新していきました。

――田中さんにとっての“おいしい卵”とは?

 実はそこまでこだわりがないのですが、強いて言えば、白身にくさみがなくて、自然なエサ――人間の都合ではなく鶏の健康を考えたエサで育った鶏の卵ですね。黄身の色が濃いものが人気ですが、黄身の色はエサの色素によって決まります。

 パプリカ粉末で濃いオレンジ色に、マリーゴールドの花びらで黄色を鮮やかに、みたいな感じで。私も以前は黄身の色が濃いものがおいしいと思っていましたが、色と味に直接の関係はなく、大きく影響するのは、エサの質です。

――田中さん流の「おいしいTKGの法則」を教えてください。

 まず、ご飯はちょっと硬めに炊くのがおすすめです。やわらかく炊いたご飯で卵かけご飯を作ると、全体がドロドロになっちゃいますし、お米の粒感があったほうが卵のおいしさや口当たりも引き立つと思います。

 お醤油以外のトッピングとしては、味にちょっとしたインパクトがあって食感があるものがおすすめです。例えば、口の中でプチプチ弾けるタイプの辛さ控えめの粒マスタードとか、生胡椒の塩漬けなどをのせると、味がぐっと高級になります。もちろん、削り節、海苔、塩昆布といった定番も好きです。

 卵そのものの美味しさを味わいたいときは、シンプルに。卵は溶かずにそのままご飯に落として、軽くかき混ぜて食べてみてください。白身、黄身、混ざりあった部分など、ひと口ごとにいろいろな味が楽しめます。醤油は途中で少しだけ垂らす程度に。

 工夫次第でいくらでもバリエーションが広がるのが卵かけご飯の面白いところです。混ぜ方や火の入れ方などで全く違うものになるし、白身と黄身で別々に調理しても楽しい。しかも栄養価が高い。こんな食材、なかなかないです。

2025.07.04(金)
文=伊藤由起
写真=釜谷洋史