この記事の連載

 子どものころから卵かけご飯(TKG)が大好きだったという田中麻衣さん。卵への興味から各地の養鶏所を巡るようになり、今年5月から佐賀県で養鶏家への第一歩を踏み出しました。これだと決めたら突き進む勢いがありながらも、冷静に未来を見据えている田中さんのこれまで、そして、これからを聞きました。

【前篇】〈卵を凍らせて作るTKG〉が濃厚でおいしすぎる! 卵を愛しすぎて養鶏家修業中の20代女子の最強レシピを公開


興味の赴くまま、まずは動いてみる

――卵の食べ比べができる催事で多種多様な卵に出会った田中さんが、さまざまなタイプの卵かけご飯をインスタにアップするようになったのが、2021年。そこから、ものすごい勢いで人生が展開していますね。

 養鶏場をめぐり、さまざまな種類の卵と出会い、卵かけご飯にして、撮って、食べて、インスタに上げて……というのが楽しくて、没頭しました。いきなり養鶏所に連絡しても、「養鶏に興味があるので見学させてほしい」という人間は珍しかったみたいで、意外とスムーズに受け入れてもらえました。と畜も比較的早い段階で経験しました。

――と畜はどういう気持ちでした?

 普通に怖いとか、可哀想みたいな感情はもちろんありました。と畜のことだけでなく、畜産物の生産や流通の背景を知って鬱々とした気持ちになったりもしました。でも、私はやっぱり卵もお肉も好きだし、これからも食べたいと思ったんですよね。と同時に、ケージ飼いより平飼いを選ぶとか、自分にできることをやっていこうと思いました。

――卵の食べ比べからどれくらいの期間でそこまで?

 はっきりとは覚えていませんが、数カ月間のことだと思います。これだ! と思うと没頭するタイプではありますね。子どものころから大好きな卵かけご飯にしても、自分で食べてインスタに上げるだけより、もっとたくさんの人と卵の美味しさをシェアしたいなと思うようになり、墨田区のシェアカフェみたいなところを間借りして卵かけご飯のお店をやってみたり。

――どんなメニューを出していたのですか?

 ランチがメインで、ひとつは普通の卵かけご飯、あとは、白身をメレンゲにしたり、ご飯を焼きおにぎりにしたり。卵は週替りでいろいろなところから仕入れて。メニュー替えのたびにイラストレーターとかフォトショップでポップを作ったりもしました。

 シェアカフェという場所柄、材料とかは置きっぱなしにできなかったので、1回1回運んで、持ち帰って。ものすごく大変でしたが、誰に頼まれたわけでもない、自分でやりたくてやっていることなんだよなぁって(笑)。

 以降も違う場所で単発的にやったり、ゲストハウスのカフェスペースでやらせてもらったり。そんなことを繰り返しながら、卵と鶏のことをもっとちゃんとした仕事にできないかなと考えるようになりました。

2025.07.04(金)
文=伊藤由起
写真=釜谷洋史