福岡で居候しながらさまざまな事業を学ぶ

――そして福岡へ。
TKGだけで生きていくのは、どう考えても無理だし……と煮詰まっていたら、福岡で卵かけご飯のお店をやっている出汁の会社の社長さんに声をかけていただいたんです。1人親方でやっている私より7歳くらい年上の女性で、「起業したばかりで、泥くさくやってるところを見たかったらおいでよ」と言ってくれて。
その言葉に飛びつくようにして、福岡に行きました。本当になんの準備もなく行ってしまったので、居候させてもらって。その社長さんや、周囲の方の仕事を手伝わせてもらいながら、結局、10カ月ほどお世話になりました。
――令和の内弟子がここに。
お世話になる一方で(笑)。出汁の事業だけでなく、広告やイベント運営など、いろいろな仕事を手伝わせてもらいました。商工会のSNS講座を開催したこともあります。商工会に所属している事業者の方々にSNSの運用をレクチャーするという仕事だったので、さまざまな個人事業主の方がこれだけ苦労してやっているんだという、たくましい背中を見せてくれました。
そんなある日、鶏舎の隅っこにうずくまっている鶏を見つけたんです。どうやら片足が使えないようで、立ったり歩いたりもできない様子で。「卵も産めないし、エサも食べないから来週出荷する」とのことでした。でも寒い時期だったし、それまで持つかな? と。お肉にするといってもだいぶ痩せていて……。以前から鶏をペットとして飼ってみたいと思っていたので、私が引き取ることにしました。
2025.07.04(金)
文=伊藤由起
写真=釜谷洋史