ピシットポン 僕には昔、特別な夢がなかったんです。スポーツをしたり、歌を歌ったり、楽しいことをするのは好きだったけれど、何かになれるとは思っていなくて。幸せな気持ちになれることをしたいと思いつつ、成長するにつれて現実と夢は違うんだとわかってきました。だけど今、役者としての仕事を続けるなかで、もっと自分の人生を理解したいと思えるようになったんです。それが僕にとっては一番新しい夢ですね。

役者をしていて一番のやりがい

――ペーは軽い気持ちで映画を撮りはじめ、創作のやりがいや本質に触れていきます。おふたりは俳優のお仕事を始めたあと、どんなやりがいや面白さに気づきましたか?

ピシットポン 役者をしていて一番やりがいを感じるのは、やっぱり自分自身や他人のことを理解できるところ。ジョー役を通じて、僕は物事をポジティブに考えることや、自分のエゴを捨てていくことを学べたと思うので。

アンソニー 僕も同じ意見で、役を演じることは自分自身を理解することにつながると思っています。それから、仕事のなかで新しい俳優のみんなに出会えるのもすごくうれしい。一生懸命頑張ってきたことが報われたような気分になります。

「僕はやっぱり演技が好き」

――『親友かよ』のあと、おふたりはご自身や周囲の環境が大きく変わったと思います。それぞれ、現在までにどんな変化がありましたか?

ピシットポン この映画に出て、僕は演じることがさらに大好きになりました。脚本をうまく表現できるようになりたいし、任せてもらえた役柄になりきりたいし、いろいろ試してみたいこともある……映画づくりそのものが好きになったんです。それから、歌手活動では歌を唄うだけでなく曲づくりもしています。今はそれぞれの道でやりたいことがあるんですよ。

アンソニー 実は、僕は『親友かよ』と同じ年に映画を2本撮ったことで力尽きてしまったんです。そのあとは演技の仕事を1年以上していなくて、ドラマのオファーもあったけれど出たいと思えなかった。しかも、何もしないでいたら情熱が失われてしまって……。けれど、もうすぐタイで放送される「Taste(英題)」というドラマのオファーを受けたときに情熱がよみがえってきたんです。今は、「僕はやっぱり演技が好きなんだな」と再び実感しています。

通訳:高杉美和

2025.06.22(日)
文=稲垣貴俊
通訳=高杉美和