祖母と孫を中心にした三世代が織りなす家族の物語を描き、タイ国内外で大ヒットした『おばあちゃんと僕の約束』。“アジアのA24”と称される新進気鋭の映画スタジオGDHが制作したことでも注目を集めている。今作が長編映画デビューとなるパット・ブーンニティパット監督に話を聞いた。

――監督は、どのようにしてこの映画の監督を勤めることになったのでしょうか?
パット・ブーンニティパット(以下、パット) 最初は、GDHの子会社のナダオという制作やマネジメントを行っている会社にいて、ドラマのメイキングを撮っていました。そこで一本ドラマを撮った後に、GDHに誘われて別のドラマを撮ったんです。その作品を評価されてこの作品に誘われました。
それ以前にもドキュメンタリー映画を撮っていました。そのドキュメンタリーは子どもと両親の葛藤を描いた話でした。それを見たGDHの方が、「人間を理解している」と言ってくれて、そんなことも大きかったのではないかと思います。
――人間を理解しているというと、その部分は『おばあちゃんと僕の約束』でも重要なことかと思います。
パット そうですね。私が共同で脚本を書いているときに意識していたのは、「想像すること」でした。「このキャラクターはどんな人なんだろう?」とか、いろんな出来事に対して「どんな反応をしてどんな決意をするんだろう?」という風に想像していました。
脚本を書き終えた後、実際に映画制作に移るときには、スタッフや俳優ひとりひとりが、どんな人なのかを理解したいと思いました。そして、彼らの良い部分を映画の制作を通じて引き出したいと思いました。
――『おばあちゃんと僕の約束』、また、同時期に公開される『親友かよ』、そして『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』など、GDHの映画を見ていると、人があまり表に表したくないであろう「苦い」部分も描いているのが特徴です。例えば今回であれば、主人公のエム(ビルキン/プッティポン・アッサラッタナクン)というキャラクターは、最初のうちはおばあちゃんの病気を知り、面倒を見ればお金が手に入るかもしれないという利己的な理由から祖母のメンジュ(ウサー・セームカム)と一緒に暮らすようになるわけです。
パット それぞれの映画によって考え方は違っていると思うんですけど、コントラストや対比を意図していたわけではないんです。ただ、自分のことを考えると、小さい頃はおばちゃんと一緒にいたけど、中高生とか大人になって家を出ると、おばあちゃんと会うことが少なくなって、子どもの頃にあった親しさが薄まっていくこともよくありますよね。でも、大人になっても、おばあちゃんに会うと懐かしく思う気持ちというのはあったんですよね。

今回、映画の脚本を書くときに、自分も実家に戻って祖母と同居するようになったので、映画の中と同じようなシチュエーションの中にいて、そういう気持ちがわかっていったということがあります。
2025.06.13(金)
文=西森路代
写真=三宅史郎