ジョーのダークな一面
――ジョーは明るい性格ですが、時折ダークな一面を見せますよね。自分の夢を綴ったノートを黒塗りにしたり、ある頼み事をするときに思いがけない表情を見せたり……。
ピシットポン 僕が思うに、人間には誰でも暗い部分があります。ジョーは実家が文房具屋で、授業料も払えないほど貧しい生活を送っている。お金に困っているからこそ、お金をたくさん使うことが大きな夢で……だからこそ、その夢が叶うかもしれないときに、明るくてフレンドリーなキャラクターが消えてしまうのは理解できました。そんなふうに暗い部分が顔を出す瞬間は誰にでもあるはずだから、ジョーの闇を特別に作る必要はないなとも。

ジョーへの思いは自然に芽生えていった
――かたや、ペーは映画を撮りながら、いなくなったジョーへの思いを膨らませていきます。ピシットポンさんがいない撮影のなかで、ペーの心境をどのように想像していましたか。
アンソニー 僕は、ペーからジョーへの愛情は常にあったと思うんです。ジョーと出会ったときも、ジョーが死んでしまったときも、彼の母親に出会って家の状況を知ったときも、他人からジョーの話を聞かされたときも。だからこそ、僕がペーの感情をあれこれと想像するよりも、いつも目の前の出来事に素直に反応していようと思っていました。

ピシットポン 「ずっと一緒にいるんだろうな」と思っている相手がいなくなったあとの時間を想像することはたぶんないと思うんです。ペーはジョーがいなくなったからこそ、彼のことを深く考えて、「もしもジョーが生きていたら」とさえ感じるんでしょうね。
アンソニー そうだね。きっと、ジョーへの思いは自然に芽生えていったんだと思う。
――ご自身も、演じるなかで気持ちが自然に膨らんでいったんですね。
アンソニー そうなんです。だから、いつかジャンプと一緒にBLドラマをやりたいですね(笑)。
二人の子どものころの「夢」
――『親友かよ』は、少年たちの「夢」がテーマの映画でもあります。おふたりには子どものころ、どんな夢がありましたか?
アンソニー 子どものころはサッカー選手になりたかったんですよ。だけど、あまりにも難しくて叶わなかった。母が僕の試合を初めて見に来たとき、いいところを見せようと思っていたのに、ボールを蹴ることすらできず交代になってしまって……。「もうダメだ」と思って役者になりました(笑)。きっと、そういう運命だったんだと思います。
2025.06.22(日)
文=稲垣貴俊
通訳=高杉美和