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“自分大好き”な人間が猫と暮らすとどうなる?

――すごく大事な話です。命を預かることの責任を感じますね。

 そうですね。若い頃だったら捉え方も違ったかもしれないですけど、僕も大人になって子供もできたから、説明がここまで長いのはなぜなのかを想像したりして。個人の感覚、夫婦の感覚、子供を含む家族の感覚、猫との感覚……いろんなことを考えました。本当はその日に引き取れたんですけど、持っていったソフトのキャリーケースだと渡せないと言われて。確かに安全面ではそうだよなと思いながら、ハードのキャリーケースを購入して後日、引き取りにいきました。で、すぐ、病院に連れていって。ハゲは残るかなと思ってたけど消えましたし、耳の炎症もすぐ治って、うちの環境にも早く馴染んでくれました。

――お子さんとの関係は最初から良好でしたか?

 子供がビビっていたこともあって、最初はお互い警戒してました。けど、自然と打ち解けましたね。うちの家族は全員、人見知りしないんです。息子も明るいし、マロンも「初めましてでこんなに擦り寄ってきてくれる猫ってなかなかいないね」って言われるくらい人懐っこいですね。

――今年の2月22日、猫の日に、Xのアカウントで「世間からの猫飼ってるとか愛猫家のイメージが0の僕」とポストされていたじゃないですか。

 自分で愛猫家っぽくないなと思うんですよ。天竺鼠の川原(克己)とかロングコートダディの堂前(透)とかが猫好きって聞くと、腑に落ちるじゃないですか。ただ、僕って客観的に見て、猫好きじゃないだろうって。そもそも、ペットがどうとかっていうタイプじゃないだろうと思うんですよ。

――純さん、自分大好きなイメージが確かに強いです。

 そうなんです。僕、人とか生命体に依存しないんです。奥さんもそうで、付き合い始めたのは大学生の頃だったんですけど、付き合って最初の3週間、一度も会ってないですからね。お互い連絡しなくて、“あぁ、この人気持ちいいな。めちゃくちゃやりやすいぞ”って思いました。今年の結婚記念日だって、ふたりとも忘れていてなんの話もしてないです。僕に関しては、ファンからDMで知らされて気づきました(笑)。

——そういう純さんにとって、マロンちゃんはどう映ってるんですか?

 めちゃくちゃかわいいです。マロンが来て、僕らが過不足ない家族になれた感じがするんですよね。いてくれることでよりバランスよくなったなと。あと、ぐーって喉を鳴らす瞬間が好きです。その音を聞くのが、毎日、みんな健康でいられてると感じられるバロメーターになってるというか。大金持ちにもなりたいし、夢も叶えたいけど、日常にほっとできる小さな幸せがあるって、きれいごとじゃなく嬉しいことだなと思うんですね。

――じゃあ、迎え入れてよかったと。

 本当によかったです。マロンがいてくれることで、家というホームをベースにいろんなことを考えられるようになりました。

 あとね、連絡の行き違いで、家族が家を空けてることってあるじゃないですか。帰ってきて誰もいないとドキッとするんですけど、そういう時に「どこに行ったのかな?」みたいなことを言える相手がいるのもいいですよね。まぁ、話しかけても姿は現さないんですけど(笑)、家のどこかにいるマロンに向かって「ママと想(息子)どこ行ったのかわかる?」とか言えるのは、僕にとって嬉しい日常のシーンですね。

ロングコートダディ堂前に見限られた瞬間

――マロンちゃんを迎え入れたことによって、自分の新たな一面を発見したりは?

 もちろんあります。自分の冷めてるところを確認できるのって……いいですよね。膝の上に乗ってほしいとか近くにいてほしいっていう思いはあるけど、そのためにどうするみたいなことを考えないんです。毎日スキンシップしているかと言われたら、してないし。

 何かのライブの時かな? 堂前と喋ってる時に「最近、うちの猫がさ」って、僕がスマホのカメラロールを見たんですよ。堂前って反射的に感情を出すタイプじゃない。しっかりと受け止めて、自分のペースでしゃべるタイプなんですよね。そんな堂前が、僕が2スクロールした瞬間、「え?」って言ったんです。

――(笑)。

 堂前からすれば、写真フォルダを開いた時に猫の写真がすぐ出てこないなんてありえないってことなんでしょうね。猫の話をする友達として見限られたのか、それ以降、堂前と話す時に猫が話題に上がらなくなりました(笑)。

 僕、マロンをなでる回数も決めてるんですよ。たとえば、50回なでたら喜んでもらえるだろうとか。

2025.07.06(日)
文=高本亜紀
撮影=釜谷洋史
写真=純(しずる)