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やめられない止まらない、フライドチキン!

 「おいしいフライドチキンに欠かせないのは、第一に使う肉の選定」と考え、祖父母が考案した味を再現するべく、鶏の銘柄だけでなく骨付きやもも肉などあらゆる部位を試作。

 あっさりヘルシーな胸肉を使うのであれば、地鶏だと油で揚げるとかたくなり、自分が理想とするふんわりとした衣とは合わないということを発見した。また、揚げ油は天ぷらに常用される太白が向かないこと、塩コショウのみのシンプルな味つけを際立たせるには、コシが強くコクのある白絞め油がベストという答えに行きついたという。

 ノスタルジーが駆りたてられるバスケットに端正に盛りつけられたフライドチキンに齧りつけば、やさしい香気が立ち上がり、ふわっとした食感のなかに鶏肉の旨みがじゅわりと広がる。

 後を引くおいしさにもう1個と手を伸ばすまえに、添えられた生玉ねぎをひとかじり。しゃきっとした食感、甘みとほろ苦さが口内の油をすっきりとリフレッシュし、これなら無限に食べられるのではないかと思うほど。

 ほかにもエシレバターをたっぷりと使い、北海道の小麦粉や生クリームまで吟味した海老グラタン、さくさくのアップルパイと冷たいアイスクリームのコンビネーションに卒倒しそうになる焼きたてパイ ア・ラ・モードなど“衝撃作”のオンパレードだ。さらに岩本さんが洋食と同じくらい心血を注ぐラーメンも味わえるとくれば、メニューを選ぶのも嬉し悩まし、嗚呼、楽しい!  時間が経っても胃袋に深く刻まれた記憶は色あせることなく、次回の再訪を心のなかで誓わずにはいられない。

TARO Azabujuban

所在地 東京都港区元麻布3-10-6 ラウレア元麻布1F
電話番号 03-6447-0298
営業時間 18:00~21:00
定休日 日・月曜
Instagram:@taro_azabujuban

小寺慶子(こでら・けいこ)

フードライター、「フライドチキン齧り隊」隊長。雑誌の編集を経てフリーのライターに。得意ジャンルは肉全般。肉食系ライターとして様々な雑誌やWEB媒体で執筆するほか、テレビ等でも活躍。趣味はひとり焼肉とリアルミートリップ。

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2025.05.25(日)
文=小寺慶子
写真=榎本麻美