
フライドチキンとかけまして、レコードと解きます。その心は、どちらも音で揚(アガ)るでしょう!
春の行楽シーズンはやっぱりフライドチキンが欠かせないという人も、新生活に向けて気分がアゲアゲなひとも。「365日、いつでもフライドチキンが恋しい!」というご同胞のための短期連載、その名も『フライドチキン齧り隊』。肉を糧に生きる肉食系ライターの小寺慶子が、音楽好きもトリコにする東京のフライドチキンが自慢のレストランをご紹介します!
【第三夜】こだわりのスピーカーから流れる音楽とフライドチキンにうっトリ♡

大手フライドチキンチェーンが、2024年のホリデーシーズンにカナダで展開したキャンペーンがユニークすぎると話題に。なんと、フライドチキンのバケットの蓋がアナログレコードになっていて、実際にそれを視聴することもできるのだとか。We Wish You a Merry ChristmasやJingle Bellsなど定番のクリスマスソングに加え、チキンが揚がる音や指をなめる音(センス抜群!)も収録されているそうで、突き抜けたクリエイティビティにフライドチキン齧り隊としては、目からウロコ。
ひとり無心で齧るフライドチキンもよいけれど、家族や気の置けない友人と楽しむときは素敵な音楽があればさらに気分が高まるというもの。音、鶏と、しりとりゲームのようなマッチングを叶えてくれるのが、世田谷区・経堂の「NEAR MINT TOKYO」です。

牧歌的な商店街でひときわ目を引く、ガラス張りのお洒落な外観。ヴィンテージレコードのコンディションを示す店名がつけられているように、店主は筋金入りの音楽好きです。存在感たっぷりのスピーカーは、オーディオマニアに愛され続けるJBLのヴィンテージ。1971年に製造されたスピーカーから流れる音は、空間全体に広がるような迫力があり、カウンター席に座った瞬間に、心地よいグルーヴ感に包まれます。

「寝ても醒めても音響のことばかり考えている」という店主は、ニューヨークに暮らしたこともあり、当時、頻繁に通ったブルックリンの店でフライドチキンのおいしさに目覚めたそう。「骨付きの腰肉の部分がとにかく旨かった。ケイジャンやパプリカなどスパイスの配合が絶妙で、まったく食べ飽きないんです」。
音響へのこだわりと同様に、自身の店で提供するフライドチキンの味もとことん追求。鶏肉をりんごジュースや白ワインビネガー、ラム酒などでマリネしてから片栗粉とベーキングパウダーを纏わせて揚げるフライドチキンの衣はふわっ、かりっとした食感で肉のジューシィさが際立ちます。別添えのサルサヴェルデで味変を楽しむのもおすすめで、迫力のサウンドとの相乗効果もあって、チキンを齧るリズムもいっそう軽快になります。
2025.04.12(土)
文=小寺慶子
写真=榎本麻美