
チキンカツの注目店とかけまして、福沢諭吉と解きます。その心は「どちらもマン(ただし旧札)パワーがあるでしょう!」。うだるような暑さをもろともせず、365日揚げ物好きを公言するご同胞のための不定期連載「フライドチキン齧り隊」。
今回は夏休み直前の“番外編”として、日本初のチキンカツ専門店をご紹介。肉を糧に生きる肉食系ライターの小寺慶子が「一度食べたら揚げ(アゲ)インしたくなる」と太鼓判を押す新店で、パワーをチャージいたしましょう!
どんなに暑くてくじけそうでもチキンカツで夏バテに勝つ!

揚げ物には定番から変わり種までさまざまありますが、魚介や野菜をのぞく個人的ベスト3は、フライドチキンと唐揚げとチキンカツです。「牛や豚を差し置いて?」というご意見もあるかと思いますが、愛してやまない“揚げ物鶏(とり)オ”のなかでも、チキンカツには、なぜだか妙に心惹かれるものがあります。とんかつ店のささみフライはもちろん、フランス料理版・チキンカツのコルドン・ブルーも大好物。
牛カツの店にインバウンドが列を成し、とんかつは日本のソウルフードと言われる時代になぜ、チキンカツの専門店がないのかと疑問に思っていた揚げ物好きも少なくないはず。ちなみに、牛や豚のカツレツが初めて日本の文献に登場したのは、江戸時代に福沢諭吉が出版した『増訂華英通語』と言われており、そこには「cutlet」が“吉列”という漢字とともに記されているそう(センスいい!)。
牛や豚に比べて後発&ややニッチではあるものの「チキンカツに、もっと光を!」というニーズにこたえるべく立ち上がったのが、肉好きのあいだで圧倒的知名度を誇る「精肉卸ヤザワミート」です。

六本木の東京ミッドタウン ガレリア地下1階に新たにオープンした「矢澤チキン」は、おそらく日本で初めてのチキンカツ専門店。焼肉、しゃぶしゃぶ、ハンバーグにとんかつなどあらゆる業態を手がけるヤザワミートですが、鶏肉をメインに据えた店舗は初。自社が運営する「とんかつ あげ福」で提供するチキンカツの人気がすこぶる高く、満を持してその調理ノウハウを生かした“専門店”を立ち上げたと聞けば、自然と期待がふくらみます。

2025.07.09(水)
文=小寺慶子
写真=榎本麻美