高知県がPRするコミュニティバスの旅で、四国山地のド田舎へ行ってみた…そこで乗った“幻のバス”の正体とは?「タヌキにでもだまされたのか」〉から続く

「コミュニティバスを使って旅に出よう」。全国でも珍しい観光キャンペーンを高知県が始めた。その第一弾は「中津渓谷」(仁淀川町)へ行くコースだ。「仁淀ブルー」が美しい仁淀川の支流・中津川にあり、行き方や渓谷の魅力は動画やHPで紹介している。

仁淀川町営のコミュニティバスを下りる

 中津渓谷は全国に知られていないのが不思議なほどの絶景の地だ。

「中津渓谷」のバス停で、仁淀川町営のコミュニティバスを下りる。まだ遊歩道にも入っていないのに、眼前の景色に目を奪われる。谷にゴロゴロと巨岩が転がっていて、山が桜や花桃でピンクに染まっていた。

温泉宿「ゆの森」のレストランへ

 到着が昼過ぎになったので、まずは県のモデルコース通りに昼食をとった。バス停のすぐ近くにある温泉宿「ゆの森」のレストランへ向かう。町の指定管理で営業している観光施設だ。

 料理もモデルコースで紹介された通りに「ゆの森弁当」を注文した。カツオのたたき、季節の天ぷら、炊き合わせの小鉢などのほか、食後のコーヒーが付いていて1520円。「人気ナンバーワンのメニュー」(フロントの社員)なのだという。

 レストランにはベランダの席もあり、満開の桜の下で食べられる。

 外国からの客が多かった。英語を話す人、中国語で会話をする家族、韓国語のカップル。インバウンドの観光客は、高知城などの観光拠点に飽き足らず、かなりローカルな観光地にまで大勢訪れている。その証拠のような場所だった。

ワゴン車タイプのコミュニティバスが見えた

 食事をしていると、山奥からつづら折りの道路をワゴン車タイプのコミュニティバスが下りて来るのが見えた。先ほど乗車したバスが終点で折り返し、町中心部へ戻っているのだろう。

 中津渓谷から先の道路は、車が1台通れるかどうかという細い箇所もある。「通行できるのはせいぜいワゴン車タイプまでで、それ以上大きいと奥の集落には行けません」(仁淀川町の担当者)という難路だ。

 しかも、県がHPで紹介した「上名野川」行きのバスは、1日に3往復しか運行していない(土日祝日運休、昼の便1往復は火曜も運休)。

2025.05.22(木)
文=葉上太郎