渓谷入口は駐車スペースが極めて少ない
ついでに申し上げておくと、中津渓谷は山深いところにあるだけに、車で来る場合も注意を要する。渓谷入口の県道は360度のヘアピンカーブになっていて、駐車スペースが極めて少ない。「ゆの森に10数台、ヘアピンカーブの内側にある公衆便所の横に3台」(町の観光担当者)だ。少し離れたところにある旧小学校のグラウンド跡に約40台とめられるという。
大型バスは渓谷入口まで実質的に乗り入れができず、県道の坂道を約700m下りた国道33号から歩いて上るなどしなければならない。「町内の会社で中型バスをチャーターし、国道から渓谷入口まで輸送するツアーもあります」と町の観光担当者は話していた。

国道から、だいだい色のマイクロバスが上って来た。チャーターではなく、愛媛県松山市のバス会社だった。
運転手に尋ねると「関西のお客さんを20人ほどお連れしました。仁淀ブルーが目的です」と話す。高知市内で観光した後、国道33号を松山に抜ける途中で寄ったのだそうだ。
「高速道路ができるまで、国道33号は高知と松山を結ぶメーンルートでした。このため以前は中津渓谷がツアーのコースに入っていました。ところが、高速道路が開通してからはルートから外れ、時間に余裕がないと来られなくなりました。美しい所なのに残念ですね」と語る。
澄んだ川が青くキラキラと光る
渓谷は遊歩道が整備されている。
巨岩の下に潜ったり、岩の裂け目を階段で上がったりしながら奥へ進む。
水は澄んでいて川底まで見える。太陽に照らされると青くキラキラと光る。

巨岩の間を縫うようにして流れる川がいくつもの滝を作っていた。切り立った岩壁から染み出るようにして滴る水も美しい。
落ちてこないか不安になる「岩」
岩がトンネルのようになった場所で、「上を見てください。落ちてきた岩が挟まっています」とガイドが説明しているのが聞こえた。確かに巨岩の隙間に岩が挟まっていて、落ちてこないか不安になる。
案内をしていたのは「仁淀川町の観光を考える会」(約10人)のメンバーだった。
代表の井上光夫さん(63)に尋ねると、「中津渓谷は1万年前に今の地形になりました。岩はいつ落ちてきたのか分かりません。ツアーのお客さんには『落ちない岩』だと受験生に教えてあげればいいのにと言われます」と笑う。
2025.05.22(木)
文=葉上太郎