この路線は、土日祝日に運休してしまう

 県がPRを始めた「コミバス旅」に従って来たのだと伝えると、「へぇ、そんな宣伝をしてくれているのですか」と知らないようだった。「こうしてお客さんに乗ってもらえると、なくしてはならない路線だけに、維持にプラスになりますよね。どこまで乗っても運賃は200円。お得なバスです。残念なのは、この路線は土日祝日に運休することです。運転手の確保が難しく、休日まで走らせられないのです」。

 これまで、観光目的で乗車した人はいるのだろうか。

「韓国から来たカップルが『大崎』から『昇雲橋』まで往復で利用してくれました」

「大崎」とは、仁淀川町役場の近くにある「バス待合所」で路線バスとの乗り継ぎ地点だ。多くの人が乗降する。「昇雲橋」は中津渓谷の遊歩道の奥まったところにある石柱に近いバス停だ。停留所の看板は建てられているものの、町役場が作成したこの路線の時刻表には停留所名さえ載っていない。どうやって調べたのだろう。「さあ、最近は外国のお客さんもよく調べて来ますよね」と運転手は感心していた。

間もなく黒岩観光バスが来た

 午後5時35分、「大崎」着。「待合所でちょっと待っていてください。路線バスはすぐに来ますから」とコミュニティバスの運転手が親切に教えてくれる。間もなく黒岩観光バスが来た。

 午後5時40分発。こちらも他の乗客はない。途中の越知(おち)町で若い女性を乗せた以外は、終着のJR佐川駅まで乗降がなかった。

 佐川駅前には午後6時10分に到着し、同34分発の普通列車で高知へ向かう。高知駅に着いたら午後7時25分だった。

 帰りはコミュニティバスも、路線バスも、列車も、時刻表と1分と違わずに運行し、乗り換えの間隔もちょうどよかった。行きのドタバタが嘘のようにスムーズだった。

撮影 葉上太郎

「水曜出発限定」「満席の場合は乗れません」…高知県が“リスク”を承知で過激なコミュニティバス観光を提案するワケ〉へ続く

2025.05.22(木)
文=葉上太郎