この記事の連載
山本奈衣瑠インタビュー #1
山本奈衣瑠インタビュー #2
未来の自分がどんな自分になっているか、私も楽しみなんです。

――モデルの仕事も複数の人が関わり合う仕事だと思うのですが、俳優の仕事と比べてどんな違いを感じていますか?
モデルの仕事も楽しくて、大好きです。歴史的に見るとモデルはマネキンの延長で、服をよりよく表現するための仕事で。いまはSNSがあるから個人の考えを発信することもできるけど、習慣的には自分の言葉を持つことやテキストで伝えることが必要とされない立場なので、「いかに持たずに出すか」ということを意識しています。
仕事の期間も短いし、関わる人数も映画に比べると少なくて、撮影したものをすぐに見ることができるのも違いますよね。スタイリストさんやカメラマンさんと意見を交換しながら、自分の意思を持って表現することを短い時間で繰り返していく。すごく瞬間的な芸術ですよね。

――映画とは現場のつくり方も違いますよね。
映画の方がモデルの仕事よりも個人の要素が強いかもしれないですね。チームプレーではあるんですけど、個人としての役割が集まることによって生まれるチームプレーっていうのかな。
映画の現場には新人もベテランもいて、それぞれが持っているパフォーマンスもかなり違います。どっちがいいとかではなくて、求められている役割がそれぞれ全然違うんですね。各々がそれぞれの場所でかまし合い、本分を成し遂げる。その結果、想像しなかったものができるというのが映画におけるチームワークなのかな。まだ5年しか俳優の仕事をしていないけど、何となくそんな風に感じています。
――俳優の仕事を続ける中で、焦点がクリアになっていかれているんですね。
そうですね、5年前とはもちろん、1年前からも変わっているかな。
夢中で生きていれば、きっと世界の見え方は常に変わっていくし、変わることがいいことだというのはこの5年間ですごく感じたことでした。この4月からはイギリス留学にも行ってきますし、次会うときにはまた新しい自分になっていると思います。そうして変わっていくのが私自身も楽しみです。
》【後篇】4月から新しい環境へ。山本奈衣瑠「いろいろな経験をすることで、自分や周囲の当たり前を壊したい」を読む
山本奈衣瑠(やまもとないる)
1993年生まれ、東京都出身。モデルとしてデビュー。モデルとして活躍しながら自ら編集長を務めるフリーマガジン「EA magazine」を創刊しクリエイターとしても活動。2022年からは俳優としても活躍の幅を広げ、『猫は逃げた』(監督:今泉力哉)で映画初主演に抜擢。「SUPER HAPPY FOREVER」の芝居が評価され、第38回高崎映画祭では最優秀助演俳優賞を受賞、さらには第79回毎日映画コンクールのスポニチグランプリ新人賞にノミネートと映画界の注目を集める。

2025.05.19(月)
文=竹中万季
写真=佐藤 亘