しかし、街路図を見るためには、博物館の会員になる必要がある。会員になるためには推薦をもらわなければならない。あちこち奔走し、推薦をもらって会員になり、ようやくその街路図に辿り着くことができた。それを眺めるのはとても楽しかったですね。博物館に篭って一日中眺めていましたよ。
そのときです、ふと思ったのは。「僕は今、数学を楽しんでいる」。フランス文学を読み漁ったことも、決闘について調べたことも、当時の街路図を調べにパリまで来たことも、博物館の会員になったことも、全部数学の楽しみだった。数学というのは、これだけ幅広い、思いもかけない楽しみ方をたくさん用意してくれているものなんだと感動しました。
私もじーんときました。
数学というのは結局、人間が作り出したものですから、その楽しみ方も非常に人間くさいのです。では早速、数学の世界にどっぷりとつかっていきましょう。
「はじめに 加藤文元vs.ド文系の編集者」より


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文藝春秋
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2025.05.13(火)