3といえば、落語家の桂三度さんはかつて「世界のナベアツ」として、3の倍数と3が付くときだけアホになる芸で一世を風靡しました。そこで僕は、3の倍数と3が付く数を「ナベアツ数」と名付け、1から10のn乗の間にナベアツ数がいくつ現れるか、その個数を求める公式を作ったことがあるんですよ。私はこれに「quasi-Nabeatsu function」、すなわち準ナベアツ関数という名前をつけました。

数学者がお笑いのネタをガチに定義したんですね。

 あ、今「ようやるわ」と思いましたね。

いえ、加藤先生ならやると思います。数学を親しみやすいものにしようという試みですよね。やっぱり先生も3が好きですか?

 巷では、僕は91が好きだということになっています。2019年に『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』(角川ソフィア文庫)という本を出したのですが、100までの素数の一覧のなかに91を入れてしまったんですよ。これは大変なミス。91は7と13で割り切れるから素数ではないんですよね。2刷目以降は一覧から削除しましたが、あれ以来、「91はブンゲン(文元)素数」と揶揄されています。でも、私はそんなに悪い気はしていません。91はやっぱり私の推し素数です(素数じゃないけど)。

 話をもとに戻すと、数には人それぞれにこだわりがありますよね。ラッキーセブン、七福神などの影響で、7が好きだという人は多いです。末広がりで縁起がいいという理由で8(八)も好まれますよね。逆に、嫌われやすい数は4。死を連想させるからでしょう。

 ただ、4を肯定的に捉える国も存在します。ドイツの友人宅を訪ねた際、お土産に塗り物のお椀のセットを持参したことがありました。セットは5客あったのですが、友人は箱を開けた途端、「なんで5つなんだ?」と怪訝な顔をしました。ドイツでは1セットは4個の方が自然なのかもしれません。彼らは奇数よりも偶数のほうが好ましく感じるわけですよ。逆に、13はキリスト教圏で忌み嫌われており、絞首台にあがる階段の段数は13だなんて話もありますが、日本ではそんなに気にされない。数に対する親しみは、国や文化によって異なるということですね。

2025.05.13(火)