どしゃ降りの中開催された生誕祭

そんなモップくんの14日の誕生日前日に開催された25名限定のイベントチケットは、販売開始から1時間で完売。開催当日はどしゃ降りの雨に見舞われましたが、キャンセルなく全員が参加。じっくりと観察できるようにという園の配慮から、モップくんの放飼場前には雨よけのテントが設置されていました。
21歳を迎えるモップくんの登場を静かに待つ中、飼育担当者が放飼場の木の上に点々と朝食を設置していきます。この日は普段の食事に加えて、誕生日プレゼントとして寄付されたブドウやキウイ、さくらんぼ、ビワなどの豪華なフルーツも。モップくんは飼育担当者が設置していく様子を、上のほうにある室内の小窓からチェックしてました。

一向に止まない雨に、飼育担当者からは「雨なので出てくるかわかりません」という言葉も。誰しもが“今日は出てこないだろう”と諦めていましたが、扉が開けられると早々に登場。喜びの歓声が挙がる中、モップくんはすぐさま食べ物が入れられたバットが置かれた場所へ向かうと、粉ミルクにひたされた食パンを手に取り、ムシャムシャと食べ始めました。
ニホンザルくらいの大きさを想像している人が多い印象ですが、実際の大きさは頭胴長が約40センチ、尾長が約45センチとかなり小柄。モップくんが持つと、ブドウの一粒もかなり大きく見えます。

1頭での生活は競争相手がいないため、食事は実にゆっくり。ときには食べかけのものを放りながら、1つひとつの食材を堪能するように上を向いて何度も咀嚼。野生でも、くるみのようなあまりにも固い殻で覆われたものは食べないようですが、栗や枇杷の種などは鋭くて太い犬歯で器用に剥いて、中を取り出して食べます。

イベントに立ち会うのは、昨年度より園長に就任された下村 実さん。モップくんがただただ朝食を食べる様子をじっくりと観察して感想を語り合う参加者の姿に、「こんなに人気があるとは想像してなかった」と驚きを隠せない様子。そんな会話がなされていても、モップくんは気にする様子もなく食事に集中。
終盤には、上のほうに置かれた大きなビワを口に咥えて木の下のほうまで持ってきたかと思いきや、そのまま室内へ持ち帰り。参加者から「え、テイクアウト?」とツッコミが出るなど、突然の帰宅という予測不可能な行動に笑いが起こりました。
2025.05.04(日)
文・写真=高本亜紀