この記事の連載
富田園子さんインタビュー
私が死んだあとも愛する猫を守る本

発売前から話題をさらい、発売するや否やすぐに重版がかかった『私が死んだあとも愛する猫を守る本』(日東書院)。タイトルの通り、自分の死後、愛猫を路頭に迷わせないための知識や備え、セーフティネットを徹底解説しています。
猫飼いたちの心配や不安を解消するこの本を手がけたのは、たくさんのペットにまつわる書籍を執筆してきた富田園子さん。自分の死後を題材にした理由や、愛猫を守るために必要なセーフティネットについて伺いました。
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自分が死んでしまったら、飼っている猫たちは……

――『私が死んだあとも愛する猫を守る本』を作ろうと思ったのはなぜですか?
富田園子さん(以下、富田) 幼い頃からずっと猫と一緒に暮らしてきたんですが、50歳という節目を迎えたことが大きいですね。東京都動物愛護相談センターの条件だと、猫を譲渡できるのは60歳まで。私自身も里親探しをする際には60歳以下の方を対象にしています。
改めてそういう条件を考えた時、自分が60歳になるまであと10年。高齢者と呼ばれる年齢が近づいていることを実感したし、猫と暮らせる時間は思ったよりも少ないのかもしれないと。
一人暮らしをしていた20代の頃は、自分が猫より先に死ぬなんて思ってもなかったんですが、50代になった途端、もし先に自分が死んでしまたら今飼っている猫たちはどうなるんだろうと。今は夫と2人暮らしで猫たちも元気なんですけど、愛する猫たちのために必ず考えないといけない問題だなと思ったんです。
――自分が死んだ後の愛猫を思う気持ちから、この本が生まれたのですね。
富田 過去に猫の飼育書を作った時に、自分がいなくなった場合のことも書いたんですけど、飼育書なのでそこまで全てを網羅できなかったんです。いつか「自分がいなくなった場合」に特化した本を作りたいと思っていたところ、猫に関する本を作りませんかとお声がけいただいて。
実は、当初は今回の本とは少し違った趣旨の企画だったんです。60歳を超えてから猫を迎えるのがタブーとされる中、それ以外の方法で猫ライフを楽しむというような。
すごく素敵だなぁと思いつつ、もう少し視点を「自分が死んだ後の猫」に向けたかったんです。なぜなら、突然猫を保護することになるかもしれないですし、60歳を超えてからも不意に猫を迎えることだって起こり得ると思ったので。それで担当の編集さんと何度も企画を揉んで、自分が死んだ後、愛猫を路頭に迷わせない仕組みづくりができるような本を作ることになったんです。
――確かに事前に仕組みづくりをしておけば、もし何かあった時に安心ですね。
富田 高齢の方だけでなく、特に1人暮らしの方には不可欠だと思います。健康で元気だとしても、事故や災害に巻き込まれる可能性はゼロではありません。万が一の時に家に帰れず、猫の存在に誰も気づかず放置されたら……。そうならないためにも、猫を飼う全ての人にセーフティネットの存在を知ってもらいたいですね。
2025.04.09(水)
文=船橋麻貴