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セーフティネットがない状態で猫を飼うのは危険

――富田さんはこれまでにも猫に関する本をたくさん手がけています。今回この本を作るにあたり、新たな気づきとなったことはありましたか?

富田 私自身、1人暮らししていた時に、セーフティネットがない状態で猫を飼っていましたが、それはものすごく危険なことだったと改めて気づかされました。猫を保護せざる得なかったりと、突然猫を迎えることも少なくないので、お金がそこまでない状態で飼い始めることを責めるわけにいきません。猫を思っての行動だと思うので。ですが、飼うと決めたなら、その間に保険に加入したり、積立貯金をしたり、頼れる人を見つけたりと、セーフティネットを作ることはできるはず。愛する猫のため、仕組みを作っておくことの大切さを実感しました。

――そんな思いが共感を呼び、発売後すぐに重版がかかったんですね。

富田 正直、本を作り終えた時、「こんなにマジメな本、誰が買ってくれるんだろう」と不安になったんです(笑)。これまで私が作ってきた猫の本は、教養や雑学が含まれるものが多く、自分が生きていることが大前提。しかし、今回の本は自分の死を考えることにもなるし、内容だって結構シリアス。だから、こんなに本を手に取ってくださった方がいると聞いた時は、みなさんの猫を大切に思う気持ちに触れられた気がしました。そんな猫を愛する人たちにとって、この本がお役に立てていたら嬉しいですね。

――自分の死後も猫を大切に思う、猫愛にあふれている1冊を作った富田さん。ご自身にとって、猫はどんな存在なのでしょうか?

富田 小説家の村山由佳さんが大好きなのですが、ご本人も猫好きで猫にまつわるエッセイがあって、その中には「ある種の人間にとって猫は必要不可欠なものである」というようなことが書かれているんです。まさに私にとっても同じ。猫がいて当たり前というか、いないと物足りないというか。

 保護猫のボランティア活動もしているんですが、猫って不思議なんですよね。一緒に暮らして3日もすれば、「昔からここにいましたけど?」みたいな顔をしていて。するっと人間の暮らしに入ってきてすぐ馴染む。それも魅力なんですが、やっぱり猫の良さは、やわらかくてあたたかくて撫でさせてくれるところですかね。旅行や出張で3日も猫に会っていないと、猫を早く撫でたいなって思わせるような、不思議な魅力に取りつかれています。

富田園子(とみた・そのこ)

ペット書籍を多く手掛けるライター、編集者。日本動物科学研究所会員。編集・執筆した本に『決定版 猫と一緒に生き残る防災BOOK』(日東書院)、『野良猫の拾い方』(大泉書店)、『教養としての猫』『猫とくらそう』(ともに西東社)など。

私が死んだあとも愛する猫を守る本

著者 富田園子 監修 磨田薫
定価 1,650円(税込)
日東書院
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2025.04.09(水)
文=船橋麻貴