この記事の連載
富田園子さんインタビュー
私が死んだあとも愛する猫を守る本
猫を託せる人を見つけ、「合鍵」を渡しておく

――猫を飼う人がすぐにでも始めておくべきセーフティネットはありますか?
富田 すぐにでもやっていただきたいのは、頼れる人を見つけて合鍵を渡しておくこと。合鍵を預けることに抵抗感を抱く人は多いかもしれませんが、例えばご自身が亡くなってしまった場合、空腹のまま放置されている猫が部屋の中にいることがわかったとしても、現在の法律上は遺族の許可なしに中に入ることが難しい。
もしご遺族に許可をとれたとしても、合鍵を持ってない場合だってあります。健康で元気な若い世代の人だって、誰にでも「もしも」の時は起こり得ます。そんな場合に備えて、家族や親戚、友人たちの中から愛猫を託せる人を見つけ、打診してみるといいと思います。
――愛猫のためにも、合鍵を託す人探しは今すぐに始めた方が良さそうですね。親世代のシニア層にもセーフティーネットの存在の周知が必要だと感じました。だけど、セーフティネットを設けること=「死」を連想させるし、なんとなく伝えづらくて……。
富田 そういう声は多いのですが、私の友人は猫を飼っている高齢のおばさんに、この本をプレゼントしたと言っていました。直接は言いづらいですが、本だと渡しやすい。この本をきっかけに、お互いの思っていることを話し合うといいと思います。たとえ我が子だとしても、アレルギーがあったり、住んでいる家がペット不可だったりして、残された猫を引き取って飼ってくれるとは限りませんから。
本の冒頭にも書きましたが、実際飼い主が亡くなって、遺族が残された猫を保健所に連れて行くケースは少なくありません。2022年度では、9559匹の猫が飼い主や親族から持ち込まれています。里親が見つからなかったら、殺処分も行われます。
――そういう目を背けたくなるような現実が、本の冒頭で書かれていて胸がギュッとなりました。
富田 私自身、泣きながら書きました。殺処分の様子はYouTubeで見ることもできますし、以前見たこともあります。「人間の身勝手でごめんね」という気持ちが込み上げてきて、耐え難い現実です。だけどそういう現実を知ってもらい、もしも自分が死んだ場合の愛猫について考えていただきたかったんです。
2025.04.09(水)
文=船橋麻貴