両親の子育ては“環境は用意するけど強制しない”

深緑:先ほどのカメラやパソコンもそうですけど、小さい頃から本物というか、良いものに触れてきたことが今の野島さんを作っている感がします。

野島:オスカーを取ったとき、取材で幼少期のこととか聞かれるだろうから父親に聞いてみたんです。そうしたら「とにかく環境を与えて放っておいた」と言ってました。環境は用意するけど強制はしないと。

深緑:アカデミー賞が決まったときに「正解のルート引けてたんだなぁ」とSNSで仰っていたかと思います。白組に入るとか、この仕事をやるとかやらないとか、色んな選択肢があったなかで、この道でよかったという実感があったのでしょうか。

野島:そうですね。学校そっちのけで「早く家に帰って編集やろう」みたいな学生生活だったので。授業内容をノートに写してはいるけど、頭の中では「今日は何しようかな」みたいなことしか考えてなくて。放課後はダッシュで帰って、カメラで撮影して、編集して、合成して、「ああ、うまくいかねえ!」というのをずっとやっていました。完全に道を外れているんです。

高校の決め手は“家から一番近い”

野島:映像作りの楽しさに気づいた日から、もう学業とかどうでもよくなって、「こんな面白いものがあるのにやってられるか」みたいな感じで。友達とかもみんな「お前、やべえな」みたいになってました。最初は親も「だいぶヤバいな」って言ってましたし。

深緑:「大学辞めるとか、おまえ何言ってるんだ⁉」と。

2025.04.10(木)
文=野島達司,深緑野分