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告白という“決闘シーン”に注目

 何より心打たれたのは告白場面。愛の告白にとどまらず、誰かと親しくなりたいとか、自分の間違いを認めたいとか、自分の精一杯の気持ちを相手に伝えようとする瞬間が何度も登場する。相手の正面に立ち、その目を見据える。最初の言葉を発するまでの張り詰めた空気、それは一対一での決闘を挑む緊張感によく似ている。この一言で大きな傷を負うかもしれない。相手を傷つけてしまうかもしれない。これまで築いてきたものすべてを失うかもしれない。それでも言わずにいられない、伝えるしかないのだと覚悟を決める。その決断の一瞬を、この映画はたしかに見せてくれる。

 どんな感情であれ、他者と向き合い、自分の気持ちを伝えようと決意した人の姿は美しい。そういえば、安川有果監督の前作『よだかの片想い』は、初めての恋によって自分を発見していくひとりの女性の話だった。新作『山田くんとLv999の恋をする』もまた、恋愛を通じて誰かと向き合う勇気を得ていく物語で、私はそんな若者たちの恋の過程にうっとりと見惚れてしまった。

『山田くんとLv999の恋をする』

3月28日(金)全国劇場にて公開
配給:KADOKAWA
©ましろ/COMISMA INC.
©2025『山田くんとLv999の恋をする』製作委員会
https://yamada999-movie.com/

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Column

映画とわたしの「生き方」

日々激変する世界のなかで、わたしたちは今、どう生きていくのか。どんな生き方がありうるのか。映画ライターの月永理絵さんが、毎月公開される新作映画を通じて、さまざまに変化していく、わたしたちの「生き方」を見つめていきます。

2025.03.29(土)
文=月永理絵