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子どもにはどう受験と向き合ってほしい?

――ご自身のお子さんには、どのように受験と付き合っていってほしいですか?

佐川さん 受験戦線に乗っていくとしても、私みたいに人格が壊れるほどに勉強はして欲しくないです。そんな状態になりそうだったら全力で止めます。健全な受験生活を送って欲しいですね。別に受験をしなくても、やりたいことがあるならどんな夢でも応援したいです。

――佐川さんが高校生に戻ってもう一度大学受験するとしたら、もっと健やかな受験生活を送りますか?

佐川さん そうですね。子どもに願うのと同じく、人格が壊れないように適度に勉強して、その中でいける大学に進学したいです。でも小学生ぐらいまで戻らないと難しいですかね。高校生までしか戻れないとしたら、多分また死ぬ気で京大を受けると思います。

 ただ、受験って答えがないから難しいですよね。親に教育虐待されている場合は別ですが、死ぬ気で勉強した経験が将来に活きる可能性もありますし、自分の限界を知ることは悪いことではない。自分の人生のスタンスは自分で決めるしかないから、簡単に「勉強しすぎないで!」とアドバイスするわけにはいかないですよね。

 私のように大学合格が人生のゴールだと思うのは良くないとは言えます。当たり前ですが、大学卒業後にも人生は続きますし、学歴だけが全てだと考えていると社会に出た時に確実に壁にぶつかります。ただただ京大に行きたかった私みたいな奴と、将来のことをきちんと想像して医学部を目指していたやつでは、やっぱり違う。

 将来、受験を経験する予定の若い人たちにアドバイスできるとしたら「大学受験の先に何をやりたいのか考えておくように」ということでしょうか。

 私や、この書籍で紹介した私の周りの人間という「サンプル」を見て、ぜひ将来を思案してください。現在を生きる人間が、過去の歴史に学ばない手はありません。

佐川恭一(さがわ・きょういち)

滋賀県生まれ。京都大学文学部卒業。著書に『ダムヤーク』『シン・サークルクラッシャー麻紀』『舞踏会』『アドルムコ会全史』『清朝時代にタイムスリップしたので科挙ガチってみた』『就活闘争20XX』などがある。

学歴狂の詩

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2025.03.25(火)
文=高田真莉絵