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 「スーパー学歴洗脳施設」だった京都の某R高校に進学したことで、青春時代をすべて受験勉強にかけてきた作家・佐川恭一さん(40)。いまだに学歴や偏差値に囚われ続けている佐川さんが、これから受験を経験する若い世代に伝えたいこととは?(全2回の2回目。前編を読む)


――大学を卒業してかなりの年月が経った今でも、学歴や偏差値のことを気にしてしまうそうですね

佐川さん 私が通っていた当時は、東大・京大・国公立医学部志望でなければ人間として扱われないような高校だったので、完全に洗脳されてしまっていて(笑)。「寛解」状態にはあるかもしれませんが、いつ学歴病が再発するかわからない状態です。

 家族ができて、子どもも生まれ、もう完治してもいいはずなんですが。いまだに東大・京大合格者ランキングはチェックしますし、テレビなどで名前を聞いたことがない高校が進学校として紹介されているのを見ると、「ほんまかいな?」と進学実績を検索します。プロフィールで「医学部出身」って書いてあるのを見ると、どこの医学部なのか調べずにはいられません。

 『学歴狂の詩』で紹介した遠藤という同級生は、高校のLINEグループに毎年、出身校の進学実績を送ってくるんです。みんなはネタとしてイジったりスルーしたりしているんですが、私だけ普通に反応しちゃいますね。まだまだ学歴病の完治は遠いかもしれません。

 でも、甲子園への出場を目指して野球に明け暮れている子たちのことは美談として取り上げるのに、東大・京大進学のために死ぬ気で勉強している子たちのことはなぜ気持ち悪がるんでしょう? この風潮には、昔から納得がいっていません。

――そうですよね。何かに熱中しているという意味では同じなのに、スポーツの方は称賛する風潮はありますね。では、学歴病に罹患していることで、プラスに感じたことはありますか?

佐川さん 同級生は結構な割合で医者や弁護士、官僚などとして活躍していて、仲が良かったグループの中で私がダントツ年収が低いんです。別に年収を話題にする機会なんてないんですが、明らかにそれはわかります。

 でも高校生のときの成績で勝ってたとか、そういうくだらない記憶のおかげで全然気にならない(笑)。稼ぎが悪かろうが社会的地位が低かろうがそれほど自己肯定感が下がることがないのは、学歴病のいい面だと言えるかもしれません。いや、ほんとはおかしいことなんですが。

2025.03.25(火)
文=高田真莉絵