小学生で「いつか豚の丸焼きを中国で食べてみたい」
――本場の中華料理との出会いの原点は、大学1年生の中国旅行だったと、ご著書に書かれていました。
酒徒 中国に行ったのはそのときが初めてで、それまではふつうに日本にいましたので、いわゆる日本の中華料理を食べて育ちました。
もともと僕は大学で中国の歴史を専攻していまして、歴史への興味から「中国行くぞ」って、張り切って北京に行ったわけですよ。昔から食い意地が張っていたので、現地の料理に興味はあったんですが、何気なく食べたら、それが想像以上においしくびっくりして、歴史への興味が、食への興味にシフトしてしまった、みたいな。

――初めて中国に行かれる前、外食として食べてらした中華料理は、どういうものでしたか?
酒徒 いわゆる「町中華」のメニューを思い浮かべていただければいいんですけど、特別なものはなにも食べてないです。⾼校のときは、部活の帰りに食べる広東麺が好きだったなあ。ちなみに、広東麺は中国にはない「日式中華料理」です。
――お好きだった中華料理は?
酒徒 とくに記憶にないですね。じつは中華料理に限らずどの料理も大好きなタイプで、それはいまも変わりません。ただ、小学4年生のときの文集に、「いつか豚の丸焼きを中国で食べてみたい」と書いていました。理由はまったく覚えてないですけど、きっとテレビかなにかで見たんでしょうね。

――初めての中国で、食べて感動したお料理は。
酒徒 水餃子って、よく書いてるんですけど、北京の、山盛りにどさっと出てくる水餃子に痺れたって感じですね。
学生時代は休みのたびに中国に出かけて、短期留学は2回ですけど、旅行を加えるともっと行ってました。

就職氷河期に選んだ大学卒業後の“進路”
――就職先は、なにかしら中国に関連する会社を意識して選ばれたのでしょうか。
酒徒 最終的にはそうです。僕が大学生のころは就職氷河期で、しかも歴史学科卒の学生に職なんてあるのかないのか、そういう時代だったんですね。みんな100社くらいエントリーシートを送るみたいな。
自分はもともと大学院まで進学して歴史を学ぶつもりで大学に入ったんですが、先ほどお話ししたように、歴史への興味が食にいってしまったので、進学はやめて、食品メーカーを狙って就職活動していたんです。
でも、途中で自分はマスプロダクトとしての食品が好きなわけではないと気づいて。どうせなら現地に住んで中華料理を食べまくるチャンスがある職に就くほうが面白いよなと方向転換しまして、「中国に行けそうな会社ってなんだろう」と、いまの会社にたどり着いた感じです。
2025.02.25(火)
文=中岡愛子