この記事の連載
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ふたりの出身地・鹿児島の焼酎と自然派ワイン
鹿児島ということで、魚や肉もできるだけ鹿児島から仕入れ、お酒は芋焼酎と、晃司さんが修業してきたお店でも馴染みのあった自然派ワインをメインに取り揃えた、他にはあまりみることのないメニュー構成。ふたりが教室で仲良く笑っている高校時代の姿が透けて見えるかのような、故郷を想い、慈しむ料理とお酒のラインアップを伺い、胸が熱くなりました。
まずは、鹿児島から届いた鰆をカルパッチョに仕立てたものから。お酒はおすすめいただいた「白石酒造」の天狗櫻の仕込みシリーズ(と彼らが呼んでいるもの)。こちらの焼酎は、芋を作るための土造りからはじまり、芋の畑、種類、アルコール分などをも細かく記したもので、地元でもファンが多いのと、そんなに大量に生産されていないこともあり、なかなか関東まで出回ることのない貴重な焼酎。
ときにはあえて小さく作った芋で仕込んでみたり、原酒を寝かせてみたりとおいしいを追求し続けている酒造なんだそうです。
その貴重な焼酎をソーダ割りにしてもらったんですが、熟成した肉厚の鰆のねっとり感と深い甘みが芋焼酎に合う~~~! グラスを口元に近づけるたびにふわっと薫る芋の香り、続けて口の中に広がるやさしい甘み。これぞ芋焼酎の醍醐味! カルパッチョに添えられた鎌倉の紅芯大根の梅酢和えが、鰆の濃厚な味わいを際立たせてくれるひと皿との相性に本気で唸りました。
続いては鹿のパテ。これももちろん鹿児島から。最近、猪をよく食べることはあったけれど、なんと鹿! しかもパテ! という私的には初の試み。合わせてもらったお酒は、カルダモン、胡椒、シナモン、クローブ、黒文字の葉、レモンなどを煮詰めたオリジナルのシロップを芋焼酎“なかむら”で割ったスパイスソーダ。猪よりも淡白で味の濃い鹿に、このパンチのきいたソーダ割りがドンピシャ。
その後もカラスミと魚の手打ちのパスタにアルザス地方の自然派ワインを合わせるなど、おぉ~~と胃袋がもろ手をあげて喜ぶ提案が出てくる、出てくる。この組み合わせの妙は、マリアージュという言葉に当てはめるにはやや物足りないくらい、いい意味で予想外の暴れん坊。何度もそうきたか、と楽しませてもらいました。
2024.12.07(土)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美