中島 そんなことない(笑)。出し入れについては考えたことがないけれど……。
朝倉 要素がすごく自由に動くんですよ。小説って平面に書かれた文章を読むわけなんだけれども、読んだ時に平面のままの小説って結構多いの。だけど中島さんはすごく立体的なんですよ。それは、魔法みたいな出し入れのおかげだと私は思っている。
中島 それを言ったら『よむよむかたる』は、魔法みたいな出し入れがされている小説です。
朝倉 できているとしたら、プロットをめっちゃちゃんと作ったからです。
中島 作っているの? プロットは作らない派だと思っていました。
朝倉 驚くなかれ、ですよ。今回から、プロットを作るようになったんです。先にプロットを作っておくと、文章に集中できるから次の作業がラクだということに気づいたんですよね。まあ、「今回から」と言いつつ、次はまだ何も出てきてないんですけど(笑)。
『だれも知らない小さな国』が大人に染みるのは、流れる時間のせい?
中島 〈坂の途中で本を読む会〉のみなさんは、児童文学の名著である『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる)を課題図書にしていますよね。あの話の中に出てくる「こぼしさま」、コロボックルのことを、読書会では〈おみとりさん〉だと解釈します。助かる見込みのなくなった人のもとにどこからともなく現れてお看取りをしてくれる、そういう存在が〈おみとりさん〉だという説明がありますが、北海道では普通に知られている言葉なんですか?
朝倉 〈おみとりさん〉は私が勝手に作った言葉なんです。お友だちのお父さんが亡くなった時に、流しの付添婦さんについてもらったそうなんです。その付添婦さんに看取られると、安らかに逝くことができるという噂がまことしやかに流れていたみたいで。そこから〈おみとりさん〉というアイディアが生まれました。
中島 死とかあの世の存在を近くに感じる、お年寄りたちならではの読み方だなと思いました。『だれも知らない小さな国』にそんな読み方があるのかという驚きがあったんですが、そこには朝倉さんご自身の想像も入り込んでいますね。
2024.11.13(水)
司会・構成=吉田大助
撮影=佐藤 亘