中島 朗読を終えた後で、感想を言い合って。

朝倉 読書会ですから小説の感想を言い合うはずなんですが、いつのまにかみんな自分の思い出話を始めます(笑)。同世代なので自分の若い頃、子どもの頃の話もできるというか、会話が通じるんです。だから楽しいのかも。

中島 私は一度だけ、自分の本が課題図書になった読書会に参加したことがあるんです(『樽とタタン』)。批評家みたいな人だと「ここに書かれているこれは~」というふうになるけれども、一般の方は自分に引きつけて読むというのがほとんどだから、個人的な思い出をたくさん話してくださった印象があります。

朝倉 私も一度、『平場の月』で同じような読書会を開いてもらったことがあるんですが、自分の書いたものが、読者さんがいろいろなことを思い出す装置になっているんだなと感じましたね。

中島 その感じが、小説にすごくよく出ていると思う。読書会を通して、それぞれの人生の話も描かれていくじゃないですか。夫婦で参加しているまちゃえさん(増田正枝)とシンちゃん(増田晋平)、思い出の中だけに出てくる息子の明典さんの話は、もう……。明典さんにまつわる秘密が明かされるシーンで、登場人物が冷麦を茹でているんですよね。あそこがすごい。

朝倉 あそこは私も、やってるなと思いました(笑)。

 

中島 やってるって(笑)。泣かせてしまうシーンだからこそ、冷麦が大事なんですよね。冷麦を茹でないとそういう話をさせられないというような、作家としての判断があった?

朝倉 そうですね。ああいう話をするのは、何かをしながらじゃなければダメなんですよ。面と向かって、膝を突き合わせて、ではなくて。

中島 そこに朝倉さんらしさというか、朝倉さんの語りの妙味を感じました。

朝倉 じゃあじゃあ、私も! 中島さんは、出し入れがすごくうまいんですよ。場面とか登場人物とか、情報の出し入れだけで全部が演出できちゃうから、中島さんだったら冷麦を茹でなくても大丈夫。

2024.11.13(水)
司会・構成=吉田大助
撮影=佐藤 亘