朝倉 気の長い話ですよね。
中島 そうそう。その時間の流れ方に本物感があるというか、「これは本当の話に違いない」と子ども心にも思ったし、大人になって読み返してもすごく染みる。大人が読んで響くものは、この小説の中に流れる時間かなと思ったんです。『よむよむかたる』には長い時間が流れていますし、新しい世代についての話でもあります。読書会のお年寄りたちがこぼしさまで、読書会が開かれるカフェの若店主の安田くんがせいたかさん、途中で出てくるちょっと不思議な女の子は『だれも知らない小さな国』で言うとおちびさんなのかな、と思ったりして……。
朝倉 そんな風に読んでいただけて嬉しいです。
中島 若店主の安田くんも好きでしたよ。新人賞を取って本も一冊出しているのに、「自称小説家」扱いされたことにちょっとイラついたりするところとか(笑)。
朝倉 私が年寄りたちを見ていて感じる驚きを、一緒に驚いて伝えてくれる、通訳みたいな人がほしかったんです。あと、小説を書いている人は、他の人が書いた小説の感想を簡単に言えない感じがするんです。安田くんも立派なことを言わなくちゃいけない、というプレッシャーを感じているというか……。
中島 「読めてない」とか言われるんじゃないか、とか。
朝倉 それそれ! そういう自意識が安田くんを縮こまらせているんです。お年寄りたちみたいに、もっと好きなように好きなことを言えばいいじゃんと思ったんです。
中島 安田くんは、小説のオリジナリティについて悩んでいるじゃないですか。「あぁ、そうだなぁ」と思いました。小説家って無から有を作っているわけではなくて、記憶や体験などの何かから作っている。その何かが、自分だけのオリジナルなものとは限らないですよね。
朝倉 私、自分の書いたものがいつ盗作だと言われてもおかしくないと思っているんです。わからないんです、本当に。アイディアみたいなものが、いったいどこから来ているのか。
2024.11.13(水)
司会・構成=吉田大助
撮影=佐藤 亘