この記事の連載
- 小泉今日子さんインタビュー #1
- 小泉今日子さんインタビュー #2
倉本聰さんが36年ぶりに映画脚本を執筆した作品『海の沈黙』。ヒロインを演じた小泉今日子さんに、同期で同い年の本木雅弘さんとの32年ぶりの共演についてや、倉本作品への思いなど、たっぷりとお聞きしました。
『海の沈黙』Introduction&Story
世界的な画家・田村修三(演:石坂浩二)の展覧会で贋作事件が起きた。画壇から追放された、かつては新進気鋭の天才画家と称された津山竜次(演:本木雅弘)が関係しているらしいと知り、津山のかつての恋人で、いまは田村の妻である安奈(演:小泉今日子)は、小樽へ向かう。「贋作」を描いたのは一体誰なのか。その理由は──。『北の国から』『やすらぎの郷』など、数多くの名作を生み出してきた倉本聰が、およそ64年前にあった「永仁の壺事件」(鎌倉時代の古瀬戸の傑作として、国の重要文化財に指定されていた瓶子が実は、1897年生まれの陶芸家・加藤唐九郎の作品であると言われ、重要文化財の指定の解除、文部技官が引責辞任するなどの事態となった)に着想を得て書き上げた、「美」と「本物」を問いかける渾身のドラマ。
本木さんとはほぼ初共演のような気持ち
――小泉さんが出演される映画『海の沈黙』がいよいよ公開になりますね。
小泉今日子さん(以下、小泉) 今回、倉本先生の渾身の作品に参加できて、とても光栄に思っています。先生が掲げる「美と本物」というテーマも、同期で同い年の本木さんとの共演も、どちらも非常に魅力的で、喜んでオファーをお受けしました。
――小泉さんは以前にも倉本さんのドラマに出演されていますよね。
小泉 はい。2005年に倉本先生が脚本を手がけた『優しい時間』という連続ドラマに、看護師役で少しだけ出演させていただきました。ドラマのあと、別作品でもオファーをいただいたのですが、そのときはどうしても都合がつかなくて。出演できなかったのが、ずっと心残りだったんです。
でも今回、倉本先生が長年構想をあたためてきた作品に参加させていただくことができて、心に引っかかっていたものがようやくとれた思いです。
――本木さんとの共演はいかがでしたか?
小泉 映画で本木さんとご一緒するのは、実は初めてなんです。テレビドラマでは、以前に一度、『あなただけ見えない』という番組で共演したことはあったのですが、サイコサスペンスドラマで、微細な感情のやり取りみたいなシーンはあまり多くなかったんですよね。そのドラマでご一緒したのも、もう32年も前の話なので、心情的にはほぼ初共演のような気持ちでした。
2024.11.22(金)
文=相澤洋美
写真=杉山拓也
スタイリスト=藤谷のりこ