――「アジアの純真」のレコーディングでは、民生さんの歌のディレクションが厳しかったそうですが。

由美 いま思うと厳しかったよね?

亜美 そうだね。何回も何回も、ふたりの声が合うまでやり直して。いま思うと、どえらい手間をかけてくれたんだなって感じます。

由美 ビブラートはいらないって言われたのを覚えてます。もともとできないんですけど(笑)。とにかくまっすぐ歌ってほしいって言われました。

「民生さんは野良犬を2匹保護したみたいなノリだったんじゃ…」

――「アジアの純真」は96年5月にリリースされて大ヒットを記録しました。そのとき民生さんと喜びを分かち合うようなことはありましたか?

亜美 なかった気がする。けっこう立て続けにレコーディングがあって、私たちは馬車馬のように働いていて(笑)。次の曲、また次の曲みたいに、どんどん、どんどん。民生さんとはよく会ってたんですけど、ヒットを喜ぶことはなく、もちろん褒められることもないし。一緒に「疲れたね」って、はあはあ言いながらやっていたと思います。

――その後も民生さんのプロデュースによる楽曲が次々にリリースされましたが、民生さんとは音楽の話をよくしたんですか?

亜美 音楽の話は……したかな?

由美 うーん。民生さんは釣りのアレ、ルアーをコップに入れる練習ばかりしてたよね。

亜美 紙コップを立てて、そこを正確に狙うキャスティングの練習をいつもしてるんです。上手く入ればコップは倒れないんですけど、外すと倒れるので、私たちがタタタタと行って、それを起こすという。ずっと犬みたいに(笑)。民生さんは野良犬を2匹保護したみたいなノリだったんじゃないですか? こいつら意外と言うこと聞くかもなって。 

――プロデューサーとアーティストという関係とはイメージがだいぶ違いますね。

由美 お弁当が届いたらお味噌汁を作る係とか、年下らしいこともやってたよね。エンジニアの方は濃いめが好きだから、お湯は少なくとか。

2024.10.15(火)
文=門間雄介