いまから28年前、安室奈美恵が2ndアルバム『SWEET 19 BLUES』をリリースし、8週目で300万枚の売り上げを達成するなど快進撃を続けていた1996年の夏。安室に続けとばかり、彼女と同じ沖縄アクターズスクール出身の少女4人によるダンスボーカルユニット・SPEEDが、シングル「Body & Soul」でCDデビューした。8月5日のことである。
メンバーの新垣仁絵(1981年4月7日生まれ)、上原多香子(1983年1月14日生まれ)、今井絵理子(1983年9月22日生まれ)、島袋寛子(1984年4月7日生まれ)はすでに前年の10月より、日本テレビの音楽バラエティ『THE夜もヒッパレ』に準レギュラーとして出演していた。SPEEDというグループ名もこの番組で一般公募して決まった。
CDデビュー時点でのメンバーの平均年齢は13.5歳で、最年少の島袋寛子は小学6年生だった。翌月に19歳になろうとしていた安室より年下で、週刊誌などメディアでも、彼女たちについて「21世紀に入ってもまだ全員が10代」などと、とかく若さが強調されていた。
少女たちが歌うにはきわどい歌詞
デビュー曲「Body & Soul」の歌詞をいま読むと、「甘い恋のかけひきは 言葉だけじゃ足りないから 痛い事とか恐がらないで もっと奥まで行こうよ いっしょに…」などと何やら意味深で、10代前半の少女たちが歌うには結構きわどい部分もあったりする。
もっとも、本人たちもまったくわけもわからず歌っていたわけではない。今井とともにボーカルを務めた島袋は、昨年のインタビューで、《子どもながらに歌詞を理解していたと思います。会いたいとか寂しいとか、恋心って年齢関係なくあると思うし》と振り返っている(「CHANTO WEB」2023年6月17日配信)。
ただ、経験が追いついていないので、大人になってからとくらべると歌詞の捉え方や解釈が浅かったことは否めない。それでも《実体験が伴っていないからこそ、その年齢なりの子のピュアさみたいなものが歌声に出ていたんじゃないかな。本来はもっとウエットになるところが、ウエットになりすぎなかったところもSPEEDのいいところだったんじゃないかなって思います》と島袋は語る(同上)。
2024.09.01(日)
文=近藤正高