〈知床〉流氷が生み出す生態系の奇跡に感動

 川湯温泉駅を発車した列車は、斜里岳とその麓に広がるのどかな風景のなかをのんびり進んでいきます。

 目指すは、知床斜里駅。一生に一度は訪れたい世界自然遺産・知床への玄関口となる駅です。

【知床斜里駅】いよいよ憧れの世界遺産・知床へ

 降り立った駅から知床観光の拠点となるウトロ温泉へは、路線バスに乗って約50分。途中、オシンコシンの滝などの名所に立ち寄るのもおすすめです。

 2005年に世界自然遺産に登録された知床。その楽しみは夏と冬では大きく異なります。

 夏には知床五湖をはじめ、多彩なネイチャーツアーが用意され、特に人気が高いのが知床半島クルーズ。

 稀少な自然環境を保全するため、一般の立ち入りが厳しく制限されている世界遺産エリアを船上から観察できる貴重な体験です。

 高さ200メートルの断崖、水面を跳ねる魚、滑空する水鳥、そして山の王者ヒグマ……。

 野生が支配する世界を目にし、さらにこの生態系を生み出すのが流氷であるという事実に驚嘆します。

 遥かロシア・アムール川で生まれた小さな氷がオホーツク海を漂いながら、巨大な塊となり、多種多様な微生物が“冷凍保存”されている流氷。

 知床に接岸した後、春の訪れとともに“解凍”され、大量の微生物を餌に魚たちが集まってきます。そして、その魚を餌に水鳥やトド、アザラシがやってきて、川へと遡上したサケやマスは、ヒグマやキタキツネの餌となり……。

 さらに巨大な氷が岩を砕いて出来上がった断崖絶壁が、この地を人間界とを隔絶することとなり、この奇跡の生態系が生み出されたのです。

 さて、冬の知床の目玉といえば「流氷ウォーク®」。足下の氷がやがて夏の圧倒的な野生の世界を生み出すことに思いを馳せれば、感動もひとしお。夏と冬、二度訪れてこそ知床の素晴らしさを体感できるのです。

◆船上から感動の大自然を堪能⇒【ゴジラ岩観光】

 なお、冬季には、羅臼発・根室海峡クルーズを行っています。

◆魅力満載のネイチャーガイドツアー⇒【シンラ】

 知床の大自然をより充実した形で満喫したいなら、ネイチャーガイドが案内するツアーに参加を。知床ガイド協議会には約20の事業者が登録しており、そのなかでも長い歴史をもつのが「シンラ」。

 夏季は知床五湖やけもの道ガイドウォークなどのほか、ナイトサファリも人気です(4月~11月)。

 冬季の「流氷ウォーク®」は例年2月~3月に催行。ドライスーツを貸し出してくれ、これ以上ない非日常の時間を満喫。また、冬季は知床五湖スノーシューイングなどのアクティビティも魅力的です。

2024.10.16(水)
文=矢野詔次郎
写真=鈴木七絵、橋本 篤
協力=北海道観光機構、JR北海道

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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