鉄道の旅でこそ再発見できる北海道の魅力

 大陸的で壮大な風景に圧倒される心地よさ。それこそが北海道を旅する醍醐味。この感動の大地を巡るなら、鉄道という選択肢も魅力的です。

 列車内では、ひたすら風景を眺めたり、日ごろ読めずにいた本を開いたり、好きな音楽の世界に浸ったり、列車に揺られながら思い思いの時間を過ごす……。北海道の鉄道には、そんな昔と変わらぬ旅の楽しみが残されているのです。

 道内には富良野線、宗谷本線、花咲線などの“絶景路線”がありますが、今回ご紹介するのは、釧路市から網走市を結ぶ路線長166.2キロの釧網(せんもう)本線。

 港町・釧路を出発してしばらくすると、タンチョウヅルの生息地として知られる釧路湿原の美しい風景が広がり、阿寒摩周国立公園の大自然のなかを走り抜け、世界遺産・知床の玄関口・知床斜里を過ぎると、車窓にはオホーツク海が。まさに道東地域の旅情がすべて詰まった路線なのです。

 運転本数は上下合わせて1日16本。全線を直通する列車となると、上下ともに4本のみ(2024年10月現在)という“超”が付くローカル線ですが、釧路湿原区間では、春になると心地よい風を感じる観光列車の運転が始まり、冬にはJR北海道で唯一のSL列車も運行。

 流氷シーズンには、オホーツク海沿岸区間を走る絶景列車も人気を集めています。

 すべてが至れり尽くせりの豪華列車の旅もそそられますが、北海道では気の向くまま、心のおもむくままに“自分らしい”鉄道旅を満喫してみたい。

【釧路駅】釧網本線の旅は、ここからスタート

 2023年には32年ぶりに水揚げ量・日本一へと返り咲いた、道東を代表する港町・釧路。その玄関口となる釧路駅から、釧網本線の旅はスタート。

 釧路駅内にはお弁当などのほか、この地域のお土産ものも豊富に揃っています。

各駅のおすすめスポットをご紹介

◆釧路といえば必食「勝手丼」⇒【和商市場】

 釧路で食べたいものといえば、やっぱり新鮮な海の幸。それを楽しいスタイルで味わえるのが「勝手丼」。

 約70年にわたって釧路市民の台所として親しまれてきた「和商市場」の名物で、観光シーズンには大行列ができる人気のご当地グルメです。

 まずは総菜店でご飯を購入(100~400円)、そして鮮魚店に並ぶ新鮮ネタ(50~500円前後)を好きに選び、最後に自分で盛り付けて「いただきます!」。

 港町ならではの魚介の美味しさに感激すること間違いなし。

◆ユニークな建築と展示で地域を学ぶ⇒【釧路市立博物館】

 釧路の自然環境から歴史文化までを網羅した、充実の展示が魅力の博物館。釧網本線の列車に乗る前に訪れれば、旅はきっと、いっそう豊かなものになります。

 地元出身の建築家・毛綱毅曠(もづなきこう)氏が手がけた、両翼を広げるタンチョウヅルをイメージした建物や、4階まで吹き抜けの空間を結ぶ二重らせん階段など、日本建築学会賞を受賞した個性的な建築も見どころです。

【釧路湿原駅】雄大な大湿原の景観に感動

 さて、釧路駅を出発して約19分、3つめに停車するのが釧路湿原駅。

 夏は緑に覆われ、冬は一面の雪景色となる釧路湿原のなかに位置し、周辺には散策路や展望台が整備され、雄大な大自然を存分に満喫できます。

◆湿原散策の休憩スポット⇒【細岡ビジターズラウンジ】

 釧路湿原の観光拠点のひとつが「細岡ビジターズラウンジ」。休憩スペースがあり、ソフトクリームなども販売しています。

2024.10.16(水)
文=矢野詔次郎
写真=鈴木七絵、橋本 篤
協力=北海道観光機構、JR北海道

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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