神奈川県三浦半島に位置する高級別荘地・葉山。品川から電車で1時間、海と自然に囲まれた、昔ながらの田園風景と富士山を望む美しい沿岸のある自然豊かな場所です。そんな葉山で近代建築の三大巨匠の一人フランク・ロイド・ライトの高弟、遠藤新が設計した「加地邸」は、2017年に有形文化財に登録され、2020年より宿泊できるようになりました。エメラルドグリーンに変化した銅板の屋根が美しい、背後の山に溶け込むようなプレイリースタイルの加地邸で、葉山での邸宅暮らしを堪能するのはいかが。


ライト哲学を受け継ぐモダニズム建築

 フランク・ロイド・ライトの高弟、遠藤新が設計し、ライト哲学を深く受け継ぐモダニズム建築の加地邸。時間と共にエメラルドグリーンに変化した銅板屋根が美しく、背後の山に溶け込むように建てられたプレイリースタイルの建物です。

 地下1階、地上2階建て、敷地面積1129.52平方メートル、延べ床面積364.38平方メートル。

 建主の加地利夫氏は、三井物産のロンドン支店長、重役、監査役を歴任した人物。加地氏の別邸として使われていた加地邸は、戦後一時GHQに接収されたのち、加地氏の子孫が管理していました。

 2017年に有形文化財として登録され、2020年から宿泊ができるように。「できる限りそのまま使って欲しい」という希望で「一棟貸し」として、当時の暮らしをそのまま体感できる宿泊施設へと生まれ変わったのです。

 遠藤新は、ライトが東京に帝国ホテルを建設した際、チーフアシスタントとして携わり、その後も自由学園明日館、山邑邸などのライト建築に携わりました。

 加地邸を手掛けたのは39歳の時のこと。帝国ホテルと同様セントラルヒーティングで全室を温め、大谷石の柱を内外に設置し空間の広がりを感じさせるなどライトの意匠を深く受け継いだ設計であることから「小さな帝国ホテル」と呼ばれています。

 ライト哲学に加え、建築、家具、照明器具に至るまで総合性の実現を目指した「全一」という遠藤の哲学で表現されています。

 大きな邸宅内は寝室や子ども部屋、ビリヤード室など各部屋が細かな階段で結びつき、各部屋からリビングに流れ着くような構造です。

2024.06.22(土)
文・撮影=神谷加奈子