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舐められたら「汚い」と思っていたのに

 そうですね。最初は犬とどういうふうに触れ合えばいいのかがあんまりわかってなかったですし、舐められたら「汚い」って思ってました。けど、その辺の認識も変わってきています。臭くもないし、水と一緒じゃんって。なんなら、舐めてくれよって思うようになりましたね。

――短期間でがらりと変わったのは、どういった点が大きかったですか。

 かわいいのもそうですけど、犬がいいのは向こうから寄ってきてくれるところですよね。例えば帰ってきていつもの椅子に座ってたら、近くに来て足をぺろぺろ舐めたりするんですよ。あと、僕らがどっちもいない時にホテルに泊めて、1、2日後くらいに会ったら嬉しそうな顔をするとか、そういうことの積み重ねで、あぁ、僕たち夫婦のことをすごく好きだし、たぶん頼ってくれてるんだなとか思うようになっていきました。

――それまで動物との距離感はどうだったんですか?

 犬はむしろ怖かったですね。未だに大きいのは怖いですけど、犬は意思疎通ができてるなって思うことがよくあるので、無下にできなくなっちゃったというか。

 家を出る時に普段とは違う鳴き方をしてると、寂しそう! とか思うじゃないですか。だから、今の時点では犬だけが特別です。

 最初は「来て」って呼んだら来るのって、どういうことなんだろうって理解できなかったというか。「来て」という言葉を覚えたのか、トーンで理解してんのか、目を見たらわかるのかとか、彼の思考を理解することに頭を使っていました。

 調べたら、何語か覚えてる可能性もあるんですね。うちのは結構覚えてると思います。絶対にダメなのは「掃除機」。ワンワン吠えます。「お散歩」はちょっとわかってますね。よく遊びに来てくれる人や奥さんの妹さんの名前とかも覚えてて。「りなちゃん(奥さんの妹)来るよ」って言ったら、わーい! って感じで喜ぶんですよ。

 あと、僕らがソファに座っていて、くむに「ボール取りに行ってきて」って言ったら、散乱している犬のおもちゃからボールを取ってくる。「ちょうだい」も覚えてるんで、自分でおもちゃを集められるようになりました。そういうところもむちゃくちゃかわいいですね。

うちの子ベストショット②「結構この伸びた体勢でいる」

――物理的な変化はもちろん、村上さんの場合、精神的な変化がすごく大きそうですね。

 くむと暮らすようになって、いろんな感情が生まれました。よその犬でもめちゃくちゃかわいいと思うようになったし、なんなら「触ってもいいですか?」って聞いちゃうし。

――以前はしなかったことですか?

2024.09.28(土)
文=高本亜紀
撮影=榎本麻美
写真=村上