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抜群におもしろい“おそろしさ”

 ネット社会の闇をテーマにしたサスペンス映画のように始まった映画は、後半から、突如として姿を変え、純粋なアクション映画として進行していく。銃撃戦が始まり、人々は疾走する。おもしろいことに、ここから吉井という人物の見え方が大きく変わり始める。彼は、突然の事態に顔色を変え、驚き狼狽する。おろおろと釈明をし、恐怖の表情を浮かべ、身を守るため必死で逃げ惑う。暴力によって、それまで見えていなかった彼の感情が、否応なく引き出されていく。

 暴力が発生するのが唐突であるように、人はまたたくまに暴力に慣れてしまう。一度銃を撃ってしまえば、人はあっというまにその行為に慣れ、いつしか攻守が交換していることにも気づかない。その理不尽さ、わからなさこそが人々の恐怖を駆り立てる。現代の社会に唐突に姿を現した『Cloud クラウド』は、実におそろしい映画だ。そのおそろしさが抜群におもしろい、という点も踏まえて、やはりこの映画はおそろしい。

映画『Cloud クラウド』
TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中

https://cloud-movie.com/

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Column

映画とわたしの「生き方」

日々激変する世界のなかで、わたしたちは今、どう生きていくのか。どんな生き方がありうるのか。映画ライターの月永理絵さんが、毎月公開される新作映画を通じて、さまざまに変化していく、わたしたちの「生き方」を見つめていきます。

2024.09.29(日)
文=月永理絵