#309 Tsushima
対馬(長崎県)/第3回
旅には“不思議な縁”というものがあるなぁ、とつくづく思った今回の対馬の旅。
そもそも対馬へ行こうかなと思ったきっかけは、友人が同じ長崎県の福江島に移住したから(福江島について)。
肝心な友人とはすれ違って会えなかったけれど、ひょんなことから知ったデザインホテル「hotel sou」の桑田隆介さんが故郷の対馬に宿をオープンするとのこと。かねがね“国境の島”を見てみたいという思いがあり、この機会に訪れてみたのでした。
桑田さんのデザインホテル「hotel jin(ホテル ジン)」は、対馬の中心地・厳原(いづはら)のメインストリートにデンと構えていました。黒い瓦屋根に白壁の、明治元年に建てられた2階建て。かつては「有明荘」という名の旅館だったそう。
その築155年の古民家を、人気建築家の長坂常(スキーマ建築計画)氏がリノベーション。そのスペースの斬新さには、もうびっくりです。
全2室あるのですが、1階はほぼ何もない空白のスペース。その1階中央に、東西に分かれて階段が配置されています。通常、2階建ての旅館なら階段は1カ所で客室は並んだ造り。この建物では、客室につながる階段が異なり、客室の間は吹き抜け。隣の部屋にダイレクトには行けない造りになっています。ちょっとしたカラクリ屋敷のようです。
それぞれの客室は二間からなる間取り。どちらも畳敷きで、カラダを包む重めのフトンが用意されています。室内にテレビはあえて置かず、1980年代のカセットテープ(山下達郎とサザンオールスターズ)とプレイヤーをセット。
広いバスルームには、それこそ両手両足を広げられるほど巨大なバスタブが置かれています(お湯をためるには時間がかかるかも⁉)。バスアメニティは自然派の「SOMALI」、肌触りのいいタオルやパジャマなど、ディテールにおもてなしの心が感じられます。
2024.09.21(土)
文・撮影=古関千恵子