地下鉄千日前線「谷町九丁目」駅から、上町筋に出て北へしばらく進む。大阪の友人によると、このあたりは寺町であるらしい。

「これをずっとこっちに行ったら、どんつきが大阪城ですよ。で、大阪城から南に沿って台地があって、そこにお寺がずらっと並んでるんですわ。だから道も広いし。でも、ここは台地だから坂を登らなあかんのですよ。だからチャリンコで来るのはちょっとめんどくさい」
 
 どこかゆったりとした空気が流れているのは、もしかしたらそんなロケーションのせいなのかもしれない。考えようによっては飲食店に向いた環境とはいいにくいのかもしれないが、そんな場所で長らく地元の人から愛されているのが、「北京料理 ヨイヨイ亭」だ。

 店名もかわいければ、日除け看板に書かれた店名のフォントも昭和っぽくてまたかわいい。
 
 サッシの引き戸を開けて店内に足を踏み入れると、まず目につくのは左側。オレンジ色のスツールが並ぶL字型のカウンターだ。その向こう側が厨房だが、特徴的なのはテーブル席が見あたらないこと。

 右側の3卓は、すべて小上がりになっているのである。これは珍しいスタイルかもしれないということで、迷うことなくこちらに上がってみることにする。
 
 壁に背を預けて見渡せば、なかなか広がりのある空間だ。決して新しくはなくそこそこ年季が入っているとはいえ、厨房などはしっかり磨き込まれているので清潔な印象がある。こういうところにこそ、お店の人の誠実な姿勢が表れるものだ。

 

まずはビールを頼もう

 ともあれ、まずはビールを頼もう。生ビールはアサヒスーパードライ、瓶ビールはスーパードライに加えてキリンラガー、サッポロ黒ラベルと、品揃えは豊富だ。

 大瓶(だいびん)の多い大阪にあって中瓶は珍しいが、500円ならまったく問題はない。ってなわけで大阪の友人がスーパードライ、私がキリンラガーを頼むことにした(意見が分かれた)。

 なお価格に関していえば、安いのはビールだけではない。料理も全体的にお手ごろで、ビールのお供に欠かせないギョーザに至っては5ヶで200円という破格値である。

2024.09.17(火)
文=印南敦史