私は料理が好きなので、手の込んだものを作りたい。でも智亜は、食事は体を作るためのものと考えているので、味や見た目より、この食事でどんな栄養が取れるかなんですよね。料理のやりがいはないけど、まずはその日の練習の負荷に合せてメニューを考えています。

クライミングのこととなるとトコトン議論

――トップアスリート同士ですが、意見の食い違いなどありますか。

野口 日常生活や子育てに関してはないです。ただ、私たちはクライミングが大好きで、お互いの成功体験や独自の価値観を持っています。意見が合う時もあれば、譲れない時も。だからクライミングのこととなるとトコトン議論してしまうのが私たちの日常なんですよ(笑)。

 意見が合わないことがあるにしろ、クライミングについて話し合える人がすぐ横にいるというのは幸せですね。

 あと、智亜は無類のゲーム好き。そこは私の相容れないところですね。リビングでゲームに没頭されても困るので、新居には智亜専用のゲーム部屋を作りました。最近は弟の明智や、安楽選手らともゲームを楽しんでいるみたいです。夜に電話しながら一緒にやってることも。以前は「ゲームばっかり」と怒ることもありましたが、今は何も言いません(笑)。

 

小柄な森選手でもメダルの可能性は大

――妹のように可愛がっていた、同じ茨城県出身の森選手もパリ五輪に出場します。

野口 彼女は中学の頃から代表に入っていて、試合にも一緒に出ていたのでよく知る仲ですが、私が引退した後も変わらない付き合いをさせてもらっています。家も近いし、私の実家にあるクライミング施設に練習しに来てくれるので、とても身近な存在ですね。

 彼女は智亜と反対でリードが得意。リードだけだったら、世界トップのヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)にも勝つ可能性はあるのですが、リードと比べるとボルダリングがそこまで得意とは言えない。ボルダリングは身体能力で遠くまで距離を出さなきゃならないので、ある程度の身長やパワーが必要です。

2024.08.20(火)
文=吉井 妙子