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 年1回というペースで舞台に立ち続けながら、ドラマや映画にも積極的に出演される佐々木蔵之介さん。インスタグラムやXも立ち上げ、今年の2月4日のお誕生日には初のインスタライブを行うなど、ファンとの交流も増えてきたのは嬉しいかぎり! インタビュー後編では、演じる役柄との向き合い方や体のメンテナンス方法などについてのお話を伺いました。


演じる役が生きた土地へと足を運び、自分の“腑”へと落としていく

――佐々木さんはよく、出演される舞台に縁のある土地を実際に訪れると伺ったことがあります。今回のフェデリコ2世は先に土地を訪れたことが舞台着手のきっかけになっていると思いますが、実際に足を運ぶことで役作りにどんな影響がありますか?

 舞台だけじゃなくて、大河ドラマ『麒麟がくる』で豊臣秀吉を演じたときもあちこち行きました。そこでお酒呑んでご飯を食べるだけだったりもするんですけど、その場所の空気を吸うのと吸わないのとでは、全然違うんです。ここがお城の跡、水攻めしたときの跡というふうに見ていくと、段々と腑に落ちるというか。

 以前『マクベス』を上演したときもスコットランドまでフォトブックを作りに行きましたが、実際にバーナムの森を見て「ここが、魔女の出てきた場所です」「この土地でダンカンのお母さんが殺されました」と話を聞くと、情景が作れるようになるんです。それまで全然入らなかったセリフがスッと入るようになる。

 今回もシチリアで十字軍がここから海を渡っていくという街を訪れました。そこの教会へ足を運ぶと、実際に兵士が十字を削った跡が残っていたりするわけです。使命として「行かなあかん! 戦うぞ!」という想いみたいなのが感じられるというか。本当にそうだったかどうかはわかりませんが、僕はそう受け取りました。

――ドラマや映画のお仕事もお忙しいと思いますが、こうやって毎年舞台に立たれることに対して、どんな想いをお持ちですか?

 実は、地方公演が楽しみなんです。

――地元の美味しいお酒が呑めるから、でしょうか?(笑)

 もちろん、それもあります(笑)。何と言うか、地方の劇場で地方の方たちと芝居を作れるというのが楽しい。劇場によって僕に対する見方もそうですし、作品に対する接し方がまったく異なるんですよ。

 例えば、戦争のお話を広島の劇場でやったとしたら、それは東京とはまったく雰囲気が違います。広島はそういう歴史のある場所だと改めて思うんです。映像と違って、舞台は劇場にみなさんが集ってくださるから、いろんな感覚を共有できる。それがすごくいいなぁと。わざわざ足を運んでくださっているわけですからね。

――話題の大河ドラマ『光る君へ』にも出演されていたので、「宣孝様に会いたい!」という気持ちで舞台を観に来られる方も多いと思います。本当にいろんなタイプの役を演じられますが、「いろんな役をやりたい」という“欲”みたいなものをお持ちですか?

 正直言うと、ありますね。この役、あんまりやったことないなと思うと「やりたい!」ってなります。僕、自分には“色”みたいなものが存在してないと思っているんです。そういう意味では、多くの種類の役をやれるのは役者の醍醐味ですね。

 時代も年齢も関係ないし、別に“ヒト”である必要もありません。動物でも、木でもいい。劇団にいたときは学校の教室のロッカーの役までやっていましたから(笑)。若いときから、あんまり変わってないのかもしれませんね。

2024.08.10(土)
文=前田美保
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=勝見宜人(Koa Hole inc.)
ヘアメイク=晋一朗