絶対に誰かが力になってくれる
もっと個人的な意味です。いまは昔と違い、結婚して夫に頼ればいいという時代ではありません。自分が自分の人生を選び、やり遂げたいという希望を持ち続けなければ、ほかの誰も変わってはくれません。
もちろん大変なこともあると思いますが、自分の力だけではできないと思うことでも、希望を持って続けていれば、絶対に誰か共感してくれる人が声をかけてくれたり、力になってくれたりします。
私もそうでした。本物を伝えたい、お菓子を文化にしたいという一心で本を出版したら、そこから百貨店で小さな教室を開かせていただくようになって。そのご縁で新宿高島屋にサロンを開設し、コンビニスイーツの監修もさせていただきました。そうやってご縁をつないでいけば、人生は変わります。
変わることを恐れず、勇気を持って未来を広げる方が増えていけばいいなと思います。
――今田さんは半世紀以上にわたり日本洋菓子界を牽引し、これまでにも数多くの門下生を育成されてきました。
50年前に私が日本にヨーロッパの伝統菓子を伝え、世の中に「洋菓子」旋風をもたらしたように、これからも新しい流れを生み出せたらと思っています。
現在は夢を見る人が少ないと聞きますが、それは夢を見るパワーがないからです。未来に希望を持ち、自信を持って自分の人生を進んでいけるようなパワーを若い人々や子どもたちが持てるような生き方を示し、力を注いでいきたいと思っています。
――まだまだ引退はできませんね。
今年で89歳になりましたが、まだ成し遂げたいことがたくさんあります。こんなことを言うのはおこがましいようですが、私の心の中にはまだ夢を見続けるエネルギーがたっぷり残っています。ですから、まだ私の中では「夢の途中」なんです。
来年は90代の大台に乗ります。これからも美と健康に留意し、皆様に貢献できる活動をしていきたいです。
2024.06.18(火)
文=相澤洋美
写真=榎本麻美