この記事の連載

 舞台を控えている藤井隆さんが自身のコンディションを保つために何をしているのだろうか? “整える”というキーワードから問いかけ、実際に取り組んでいること、また読書家としての楽しみについても伺った。

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自分を整えるのは、自分でやるべきこと

――ご自身の心や身体を”整える“ために実践していることがあれば教えてください。

 “整える”、という言葉を聞くと、ちょっときつい言い方ですが、「むしろ、整ってたまるか!」という感じでしょうか(笑)。言葉自体は素敵だと思うのですが、落ち着いたイメージがありますよね。

 僕はせっかちなタイプで、6割がせっかち、のんびりしているのは残りの4割程度。いつも僕の近くにいるマネージャーさんや家族は、「今日はせっかち? それとものんびり?」という感じで困らせていることもあると思うんですが、僕は6割のせっかちで落ち着きのないほうが通常運転。足並みを揃えなきゃいけない、というときは放っておいても自分でちゃんと整えるんです。

 “整う”というのは、コンディションを良くするという意味ですよね。僕は自分が快適でいないと人に優しく出来ないと思っているので、快適でいることが自分の中で優先順位として高いんです。だからお腹が減っていたら機嫌が悪くなるから、稽古場にはおいしいものを食べて自分の機嫌を取るとか、コーヒーを買っていくとか、少しでもいい稽古ができるように努めています。

 サウナが流行っていることで“整える”という言葉をよく耳にするようになりましたが、サウナやピラティス、ヨガなどに能動的に行くことは、すごく素敵で憧れます。でも僕は寝ることと、ご飯を食べることという二本柱で、それさえちゃんと満たされていれば、結構整っているんです。ちゃんと寝て食べていればいいので、どこかに出かけてヨガをする必要もなく、我ながら便利な体だなと思います。

――“自分の機嫌を取る”とはどういうことですか?

 僕は両親と兄という家族構成の中で一番年下というポジションで生まれ育って、兄には本当によく面倒を見てもらいました。社会人になって自立できたと思っていたんですが、吉本に入ると、またお兄さんやお姉さんのような人たちが傍にいて、手をかけ、目をかけてくださったので、そこでも実の兄と並ぶくらいお世話していただきました。

 さらにマネージャーという存在は、僕の新しい仕事場で出会う人たちに「藤井の担当です」と窓口になってくれています。自分のことを近くで支えてくれる人がいる仕事なので、そういう仕事を選んだからには、せめて自分の機嫌くらいは自分でコントロールしなければならないなと思ったんです。

 もちろん「いつものアレはないの」とか、マネージャーさんにご機嫌取りを頼むことだってできますが、それは滑稽ですよね。ナイスな人はマネージャーさんやまわりの人に自分の都合で苦労させることもないですし、そういう方こそこの業界で長くお仕事をされているように思います。少しでも自分で自分の機嫌を取ることを心がけているのは、そういうナイスな方々の振る舞いが素敵だったので真似したいなと思ったからなんです。

2024.04.06(土)
文=山下シオン
ヘアメイク=柳 美保
スタイリスト=奥田ひろ子