VTuber、K-POPなど、幅広いジャンルで“推し活”をしている12人の方に推し活とは何かを問うことで、現状の推し活ブームを読み解く本『推し問答!』を上梓した、ライターの藤谷千明さん。

 藤谷さんと、今や社会現象ともなっている「推し活」について改めて考えます。


オタク女性が市民権を得たのはいつ?

――藤谷さん自身はどういった推し活をされてきたんでしょうか?

 振り返ると、中学2年生のときにLUNA SEAや黒夢などのヴィジュアル系バンドにハマったのが最初です。1994〜1995年頃で、当然まだ推し活という言葉がない時期ですね。結局ライターとしての仕事につながったくらいにヴィジュアル系はずっと好きで、あとはわりとその時々で流行っているものにハマってきました。オタク且つミーハーなんです。ドラマ『マジすか学園』にめちゃくちゃハマったり、『HiGH&LOW』シリーズにハマってLDHのライブに行ったり。東海オンエアにハマって愛知県岡崎市に2回くらい聖地巡礼したこともあります。

――アクティブですごいですね。

 いや、でも自分では大したことないと思ってるんですよ。好きなバンドの全国ツアーに全部行くタイプではないですし。オタクじゃない人からは「よく現場に行っている人」と思われるけど、本当に熱狂的な人からすれば「ヌルい」と思われる立ち位置だと思います。中途半端なオタクですね。

――とはいえオタク及び何かのファンを30年近くやってこられた立場だと思います。その目から見て、推し活をする人の存在感が社会的に大きくなったのはいつ頃からだと思いますか?

 2021年に、広瀬アリスさんが出演されたジョージアのCMが個人的に衝撃だったんです。オフィスで働いている広瀬さんが、声優の梅原裕一郎さんと仕事をすることになって喜びのあまり叫ぶというもので。

――ありましたね。話題になりました。

 さかのぼれば、1990年代はお茶の間レベルでの「オタク」のイメージって宅八郎さん(タレント、コラムニスト。「おたく評論家」として活動)だったと思います。あるいは、岡崎京子の『リバーズ・エッジ』で同人マンガを描いていて妹にいじめられるお姉ちゃんのような、オタク女性といえばああいう“女を捨てている”ようなイメージを持っていました。

 2000年代に入ると、しょこたんこと中川翔子さんがブレイクしてオタクのパブリック・イメージは多少向上したと思います。しょこたんのおかげで、何かに夢中になっている人や何かを一生懸命応援している人が「ちょっと変わった人」くらいの立ち位置になっていきました。ただ、それでも市民権を得たというよりはまだ異物感があった。しょこたんも、昔でいう“不思議ちゃん”の延長線上のキャラクターとして捉えられていたように思います。

2024.04.02(火)
文=斎藤 岬
撮影=平松市聖