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●駆け引きできる今泉力哉監督との関係性

――そして、今や名コンビといえる今泉力哉監督との『窓辺にて』と『ちひろさん』が続いて公開。『窓辺にて』では稲垣吾郎さん演じる主人公・茂巳の友人のマサ役を演じられました。

 『窓辺にて』に関しては、今泉さんから台本を渡されて、「俺はこの役で考えているんだけど、どの役がやりたい?」と言われたんですよ。そのとき、今泉さんが想定した役だと、「今泉さんがこういう演出をして、自分はこういう対応するだろうな」っていう、想像の範疇で収まると思ってしまったんです。

 それで僕的にはマサが魅力的に見えるっていう話をしました。現場で、今泉さんとお互い「これどうする?」って悩みそうな可能性がある方を選んだ感じです。実際、『ちひろさん』と比べると、大変でしたし(笑)。

――そんな有村架純演じる主人公が勤める弁当屋の常連客・谷口役を演じられた『ちひろさん』はいかがでしたか?

 谷口という役は今泉さんからピンポイントで来たんですが、その後に原作を読んだら「いちばん俺がやらなそうな役が来たな」と思ったんですよ(笑)。ある種、「これは試されているな」と思ったし、逆にあれを自分が咀嚼したときに、「どう出していくのか?」っていうことを、台本読みの段階から今泉さんが想像しそうなことを全部逆張りした感じですかね。

 本当にギリギリのラインを狙いながら。今泉さんも「そう来るんだぁ」と笑っていましたけど、そういうやり取りができる監督は少ないので、面白い現場でしたね。僕が映画に出るとき、ほぼ全部の作品に共通していると思うんですけど、やっぱ寂しいとか、悲しいとか、弱いとか、そういう感情はやっぱりブレちゃいけないなと思ってやっていますね。

2024.03.08(金)
文=くれい 響
撮影=今井知佑