この記事の連載

 「CREA WEB」では19年、21年に続いて、三度目の登場となる若葉竜也。『街の上で』以来、2作目の主演作となる『ペナルティループ』の公開を控え、今や常連である今泉力哉監督作など、前回の登場から出演したすべての映画作品を振り返りつつ、自身の演技論や作品作りへのこだわりについて語ってもらいました。


●初日からアクセルベタ踏みだった『前科者』

――22年、最初に公開されたのが『前科者』。森田 剛さん演じる元受刑者の前に現れる謎の男・実役を演じ、久しぶりに金髪姿でモンスター的な若葉さんの演技が堪能できました。

 以前から興味があった岸善幸監督からのオファーでした。じつは脚本には「白髪の男」って書いてあったんです。でも、読み進めていくうちに、「角刈りが伸びたぐらいの方がいいんじゃないか?」と思い、岸監督と会って、最初に話したのが髪型の話でした。

 ずっとドキュメンタリーをやってきた監督さんから「白髪の青年を見たことがある」と言われる説得力は、僕らの考えの比になりませんでした。それで分かりやすい金髪や白髪ではなくて、しっかり異様さがあるところで、まとまった感じです。ビジュアルから役に入ったという、かなり珍しい作品ではありましたね。

――『愛がなんだ』で演じたナカハラのような、片思いする優男の役が増えていましたが、どこかで振り切った役を演じられない葛藤みたいなものはありました?

 多分、僕が振り切れない役が続いていて、どこか欲求不満になっていそうだから、キャスティングの方が「一回振り切らせてみよう」と思って、話をくれたんじゃないかと(笑)。だから、とても嬉しかったです。

 芝居でいったら、あれは発散なんで、初日からアクセルベタ踏みでした。岸監督の現場はテストもなく、本番から入るんですが、それをやっても大丈夫な現場だと分かっていたし、主演の有村架純さんは「ドラマ版」から同じ役をやっていることも知っていたので、それまでに登場してきたキャラクターの上を行くぐらいアクセル踏んでやろうと思っていましたね(笑)。

2024.03.08(金)
文=くれい 響
撮影=今井知佑