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●同世代の監督と戦友になること

――続いて、いかにもイベント会社にいそうな、ズル賢い男・梅川を演じた『神は見返りを求める』。十年以上前から仲良しのムロツヨシさん、『愛がなんだ』以来の岸井ゆきのさんとの共演でした。

 あの映画を観た人から「ああいう、“こすい”役をやらせたら、右に出る者はいないよね」って言われたんですけれど、じつは僕、ああいう役って初めてだったんですよ。だからこそ、やってみたいと思ったし、そんな評価をされてラッキーだと思いました。

 吉田恵輔監督の「この俳優に、こういうことをやらせたい」っていう思いが、まったくあざとくないし、かましていないんですよね。そういうキャスティングができる監督はすごいって思いましたし、面白いっすよね。ムロさんと改めて芝居するのは、めちゃくちゃ恥ずかしかったですし、かなり緊張もしていたんですよ(笑)。

――続いて、育児放棄した母親の男・山﨑役を演じた『ぜんぶ、ボクのせい』。後に『Winny』を撮る松本優作監督の商業デビュー作に出演するきっかけは?

 若手監督というか、同世代の監督と戦友になることと、諸先輩方々に喧嘩を売っていくことは、俳優としていつか必要だという意識はどこかであったので、「若い監督と一緒にやりたい」っていう話はよくしていたんです。そういう意識があったうえの出演だったので、とりあえず現場を見に行くというか、「どうなんだ?」という気持ちでした。

 実際、面白かったし、すごく才能を感じました。ちょっとクスクスってなっちゃうシーンを、はしゃいで撮らないんですよ。すごく淡々と、整合性を見ながら撮る判断力があるので、もっともっと上に行く人なんだろうなと思いました。守破離じゃないけれど、先人たちの知識をちゃんと踏襲しながら、壊していかなきゃいけない側の人間だと思うので、まだまだ若い監督たちと一緒にやると思います。

2024.03.08(金)
文=くれい 響
撮影=今井知佑