この人がそういう被害者だということは、話していてもわからないし、仲が良くても知らないかもしれない。家族にも言わない人がたくさんいるのではないかと思います。れいこを演じていても、そういうものなんだろうなということが非常に腑に落ちました。

 ひとつの正解があるわけではない。監督の表し方は、とても意味のあるものになったのではないかと思って、参加することができたことがすごくうれしいです。

三島 ありがとうございます。

前田 いえいえ、こちらこそです。

三島 この映画は、100人いたら100通りの受け取り方があっていいと思っています。おっしゃるとおり、誰しもが何かがある。ただ誰にも言っていないし、もしかしたら自分自身も認識してない方もいる。

前田 環境によっては、生まれながらに傷ついている人もいるでしょうしね。

 それでも人生は続いていくんだと、先ほど「今が幸せ」なんて言ってしまった私でも思うことがあります。「あれ? これ、いつまでやっていればいいんだろう」とか(笑)。

三島 (笑)。でもわかりますね。

 

前田敦子さんが「子どもが眠った後に考えること」

前田 「これを繰り返さないといけないのかな。ちょっとそれは疲れるな」とか思いますよね。特に、子どもが眠ってしまって自分が眠れないときは、ずっと考えていますね。

三島 思考するシャーマンですから。おっしゃるとおり、過去を振り返ることはないかもしれないけど、今のことを考えている時点で、今は過去ですからね。だから結局は過去を考えているんだと思うんです。今をどう生きるかというのは、全部過去に繋がっていますよね。ずっと考えているから過去を振り返ってない気がしているだけですよ。

前田 そうかそうか。私がよく考えているというのは、つまり整理整頓癖なのかもしれません。なんか腑に落ちないことがあったら、知らんぷりできるタイプではないんですよ。自分の中でちゃんと答えを見つけていきたいタイプなんです。

2024.02.20(火)
文=こみねあつこ